甲子園の風BACK NUMBER
有望球児は中学から“進学塾”状態、ヘルメット1つで8000~1万円、体育着OKの公立校…意外と知らない「高校野球の最新マネー事情」
posted2022/08/07 11:00
text by
手束仁Jin Teduka
photograph by
Sports Graphic Number
晴れて高校に入学して野球部に入部。高校野球を始めようという生徒のほとんどは、中学生時代に何らかの形で野球を経験している。もちろん、中学時代にどのようなチームで、どういう思いで野球を経験してきたのかということも、今の時代の高校野球では大きな要素となっている。
現在の高校野球では、その中学時代の野球の経験の仕方によって、入学段階からある程度は振り分けられていくというのも正直なところだ。もっと言うと、どういう意図(意識)で高校野球に取り組むのかというところで、進学先も変わってくる。当然のことながら、学校によって野球に対する比重は、生活的にも経済的にも異なってくる。
甲子園出場を目標とすると、学校からも結果を
いわゆる有力校、強豪校と言われるところに入学して、甲子園出場を絶対的な目標として野球部に入部する選手は、中学時代から(あるいは、もっと以前から)硬式野球に馴染んでいるというケースが多い。その中でも、実績を上げてきた選手は野球エリートと言われている。そんな選手たちは、制度としてガイドラインも作られていて、特待生という立場で入学していくこともある。また、スポーツ推薦、特別推薦という枠で志望校に入学していくケースもある。
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私学の場合であれば「強化部活動」として、甲子園出場を前提とした結果を求められるところも少なくはない。現在のところ、全国で3800校前後の高校野球連盟加盟校があるとすると、その2割程度はそうした活動を前提としている。それらの多くは、何らかの形で有望選手を勧誘して獲得していくシステムを作っている。
もちろん、その中でも甲子園出場という結果を得られ、さらにはその先の全国制覇も手にするというのは、ごく一部でしかない。それでも、その頂点を目指して取り組んでいく姿勢こそ大事だという考え方もある。そうした、目標へ向けて努力していったことを見ていくことで、高校野球は評価もされてきたのだ。
だから、甲子園出場を絶対的な目標として目指していく強化部という位置づけの野球部は、学校からも結果を求められることになる。そのため、指導者やスタッフの最初の作業としては、有望選手を獲得していくことから始まる。それらの眼鏡にかなう選手は、中学時代からリトルシニアチームやボーイズ、ポニーといったクラブチームに所属しているケースが多い。そして、そういう生徒の場合は、グラブ等も含めて、中学時代から硬式仕様を用いている。
中学時代、外部組織のチームでかかる金額は?
また、中学の部活動ではない外部組織のクラブチームでプレーをしてきたということは、すでにそこまでにもそれなりのお金がかかっている。つまり、学校の外での習い事の一つとして、硬式野球を経験してきているのだ。そのために、親たちもいくらかのお金を注いできたということになる。