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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ラミレスを発掘した名スカウトに聞く、“助っ人が当たるヤクルト”は何が違う? 球団をダメにする「見ず買い」と「特別扱い」
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/08/02 11:03
ヤクルトで活躍した(左から)オマリー、ブロス、ミューレン。ヤクルトに「アタリ助っ人」が多い理由とは
「事前に選手情報を仕入れて、候補を絞ってから渡米して視察するので、こんな楽なことはありませんよ。(テリー・)ブロスも(ロベルト・)ペタジーニも、インディアンズの資料から見つけ出した選手でした(同球団とヤクルトの業務提携は2021年限りで解消)」
着目した「アメリカでフェンスギリギリまで飛ぶ選手」
中島さんは高校までインターナショナルスクールでの野球経験はあるものの、プロでのプレーヤー経験はない。選手を見る目はどのようにして養われたのか。そう聞くと、中島さんは意外なことを教えてくれた。
「ヤクルトは20年ほどアメリカのユマでキャンプを張っていたんですけど、MLBから2~3人コーチを雇っていたんです。僕は通訳として毎日彼らとミーティングをして、バッティングや守備の理屈を教わりました。現場でもコーチと接する機会が多いので、自然と覚えていきました。その教えがベースになりましたね」
中島さんがスカウトを務めた当時、日本向きの外国人打者を見つけるために、中島さんはあるキーワードを使っていた。それは「ウォーニング・トラック・フライボールヒッター」である。
「アメリカではフェンスギリギリまで飛ぶけど、打球にもうひと伸びなくて外野フライになってしまう選手をそう呼ぶんです。でも、当時の日本はナゴヤ球場とか広島市民球場とか、狭い球場が多かった。MLBでは広い球場や速球派投手の球威に押し込まれてしまう打者でも、日本ならホームランバッターになるんじゃないか? と気づいたんです」
そうやって中島さんがスカウトしたのが、ペタジーニやラミレスだった。
巨人とヤクルトの“決定的な違い”
名スカウトとして名を上げた中島さんは、2005年に巨人へと電撃移籍している。だが、2012年までの巨人在籍期間は勝手の違いに戸惑った。ヤクルトとの一番の違いは、巨人が選手の「格」にこだわることだった。