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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ラミレスを発掘した名スカウトに聞く、“助っ人が当たるヤクルト”は何が違う? 球団をダメにする「見ず買い」と「特別扱い」
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/08/02 11:03
ヤクルトで活躍した(左から)オマリー、ブロス、ミューレン。ヤクルトに「アタリ助っ人」が多い理由とは
「こちらが『マイナーリーガーをとりましょう』と言っても、『いや、大リーガーだ』と聞いてもらえない。だからよく上層部とはケンカしましたよ。今年メジャー実績のないウォーカーをとったのは素晴らしいですが、あの体質は治らないんじゃないですか」
巨人はニューヨーク・ヤンキースと業務提携していたが、同じ提携でもヤクルトとインディアンズの契約に比べると「0対100」(中島さん)と言うほど雲泥の差だった。
「巨人の提携は親会社の新聞社主導のお付き合い程度のもの。球団はあまりタッチしておらず、選手の情報をほしいと言っても1~2カ月もかかるわけです。この提携では意味がないと思いました」
ハイヤーで二軍球場へ…「チームをダメにしていく」
また、巨人が獲得した外国人選手への扱い方も目に余った。よみうりランドにある二軍施設で練習する外国人選手がハイヤーに乗ってやってくるのを見て、中島さんは「アホじゃないか」と呆れたという。
「外国人を特別扱いすればするほど、日本人はやっかんで近づかなくなります。そんな要人みたいな扱いがチームをダメにしていくんだと、すぐにやめてもらいました」
ヤンキースとの提携が思うように改善できなかったため、中島さんが巨人に提案したのは「駐米スカウト」の設置である。元広島のネイサン・ミンチーと契約し、その後は日本ハムなどで活躍したフェルナンド・セギノールとも契約するようになった。今はどの球団も駐米スカウトを置くことが当たり前になっているが、巨人でその必要性を説いた人物こそ中島さんだった。
外国人スカウトの厳しさ「失敗すれば、クビです」
中島さんは外国人スカウトの厳しさをこう語る。
「外国人選手は働いて当たり前。1年間活躍しなければ、スカウトはクソの扱いを受けるんです。失敗すれば、もうクビですから必死でしたよ。ヤクルトで10年、巨人で8年と毎年アメリカに行かせてもらえたことは、僕にとって大きな自負になっています」
今や日本球界も広い球場が増え、ウォーニング・トラック・フライボールヒッターでは通用しないのかもしれない。中島さんは言う。
「スカウトの見方も、時代とともに変わっていくものです」
来年の日本プロ野球界には、どんな新外国人がくるのだろうか。その戦いは今、海の向こうでひっそりと本格化している。
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