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大谷翔平は本当にピッチングに専念したほうがいいのか? 日米成績の比較から分かる、「投手オオタニが打者オオタニに追いつく日」
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2022/06/28 11:02
ロイヤルズ戦で今季6勝目を挙げた大谷
スモルツの指摘「もしも大谷が投球に専念したら…」
そんなこともあって、過日、米野球殿堂入りした元サイ・ヤング賞投手のジョン・スモルツが、テレビ中継の解説中、「もしも彼(大谷)がこれから2度と打席に立たずに投球に専念したら、ア・リーグのジェイコブ・デグロムになれる」と語り、日本でもニュースになった。
デグロムは2018年から2年連続でサイ・ヤング賞を獲得したメッツのダブル・エース(もう一人はやはりサイ・ヤング賞投手のマックス・シャーザー)の内の一人で、現在のMLBを代表する右投げ投手である。
スモルツ発言を「投打二刀流への異議」と勘違いする人もいたようだが、スモルツは「投手・大谷」の才能を認めた上で、「この男は本塁打を放って、ミーティングにも顔を出しながらビデオでも研究をして、さらに(登板間に)ブルペンに入って投球練習もしなくちゃならない」と、日々の限られた時間の中で、「打者・大谷」との共存がいかに大変なのかを指摘しただけのことだ。
デグロムの投球内容との比較からわかること
ただし、「このまま『投打二刀流』を続けていては、デグロムのようにはなれない」という解釈なら、少し異論を唱えたい。
デグロムはサイ・ヤング賞となった2018年と2019年の間、平均32試合に先発し、210イニングに登板して262三振を奪っている。
大谷は今の登板ペースなら今季登板は残り15試合前後、計27試合前後になり、153イニング程度を投げると見られ、「サイ・ヤング・イヤー」のデグロムには遠く及ばない。
だが、大谷は前出の通り、9回あたりの奪三振率が11.85にも達しており、それはデグロムの2018年と2019年の平均11.20を大きく上回っている。誤解を恐れずに言えば、「瞬間的なパフォーマンスなら、大谷はすでにデグロムに匹敵している」と考えていいだろう。
それでも大谷が今季、全盛期のデグロムのように269奪三振(2018年)を記録するとは思えないが、彼の奪三振はここまで12試合で90個、つまり、1試合平均では7.5個だ。残り15試合×1試合平均7.5奪三振=112.5個は加算されそうなので、ここまでの90個と併せると202.5奪三振にも達する。
それだけでも特筆すべきなのだが、もしも、「投手・大谷」がここからさらに、加速したらどうなるか。
前述の推定イニング数を10イニングほど上回り、規定投球回数(チームの全試合×1.0=通常なら162イニング)に達したなら、とても面白いことが起こる。いや、正確には昨年まで同様、「前代未聞のパフォーマンスをした大谷」について、新たな論議が起こるのではないかと思う。