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〈トルネード旋風から27年〉強気な野茂英雄に“先輩”吉井理人は「アイツ、ホンマにやりよった…」常識破りのメジャー挑戦
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2022/06/19 06:00
吉井にとって近鉄の後輩にあたる野茂は、メジャーの先輩になった。
野村監督には嘘ついてました
僕自身もプロ生活14年目となる'97年にはメジャー移籍を意識するようになり、シーズン中に野村克也監督にうまいこと言って、メジャーのように中4日で登板させてもらったりしました。いま、「うまいこと」と言いましたが、監督には嘘ついてました。すんません(笑)。
そして'98年にメッツに移籍し、その年の6月には野茂と再びチームメイトになります。当時、僕はローテーションの5番手だったんですが、野茂が移籍してきてからも5番手のままでした(笑)。メジャーでの格は野茂の方が上だったんだと思います。
一緒にプレーした時期には、野茂からメジャーの「暗黙のルール」についていろいろと教えてもらいました。たとえば、大差がついた試合だと、相手に内角攻めをするのはメジャーでは御法度なんです。グラウンド上だけではなく、クラブハウスでのしきたりだとか、勉強になりましたね。
日本とアメリカの“大きな違い”とは?
僕自身が投手として勉強になったのは、コンディショニングの概念です。シーズン162試合を先発5人、基本的に中4日で回していくのは、最初は大変でした。先発は110球をメドに交代しますが、慣れてくるとゲームで力を出し切る前にマウンドを降りることになるので、かえって調子が整えやすいことが分かってきました。力を出し切ってから回復させて、ということを繰り返していると、シーズンのどこかで調子がガクンと落ちる時期が来るんです。
ここが日本とアメリカの大きな違いです。日本では中6日なので、先発で力を出し切り、その間に前回登板の反省をブルペンで解消してから次の先発に向かうわけですが、中4日でそれをやっていたら持ちません。メジャーでは調整程度に抑えておいて、先発登板の日にピークを持っていく。