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送球をグラウンドに叩きつけることも…“危なすぎる守備”アダム・ウォーカー30歳を巨人・原監督が使い続けるワケ《年俸3400万円の選手にかける“大化け”の期待》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/05/14 11:04
打撃では結果を残しているウォーカーだが、守備では捕球でも送球でも危なっかしい場面が目立つ
「タツノリ、お前にとってバッティングってなんだ?」
「ああでもない、こうでもないってフォームのことで悩んで、打席でも非常に迷いが出ていた。そんな姿を見ていたんだろうね。ある日、レジーが僕のところにやって来て『タツノリ、お前にとってバッティングってなんだ?』って聞いてきたんだ」
ただ、不振の迷宮に入っていた選手・原辰徳はその問いに即答はできずに、言葉に詰まってしまった。するとスミスは学校の先生が生徒を諭すように、こう語りかけてきたという。
「バッティングで1番大事なことは、まずスイングすることだ。フォームとか、バットの軌道とか、そんなことで悩むんじゃなくて、ますスイングしなさい。自分が追い詰められているときこそ、まず強くバットを振ることを考えなさい。バッティングとはスイング・ファーストなんだよ」
日本で骨を埋めるくらいの気持ちでやってきている選手
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その時の「スイング・ファースト」という言葉は、その後の幾度となく訪れた修羅場でバッター・原辰徳を支え、指導者となった後にも打撃哲学として刻まれるものとなった。
もちろん1983年のリーグ優勝決定試合での1試合3本塁打などバットでの貢献もさることながら、このパターンの選手は数字以上の影響力をチームに与えて貢献してくれるという点でも貴重な存在となるものだ。
そしてもう1つのパターンはアメリカではあまり成功は手にできなかったが、日本で成功して骨を埋めるくらいの気持ちでやってきている選手である。
それはまさにウォーカーのような選手だ。
「一番、厄介なのは実績があって日本で最後にひと稼ぎしようというような選手だよね。メジャーで実績があるから、日本にきても自分のスタイルを変えようとしない。それでいて結果が出ないと起用法やアンパイアなど周囲の環境のせいにする。でも、アメリカでなかなか結果が出なくても、日本で絶対に成功したいと思っている選手は、やっぱり必死ですよ。だから環境への順応も早いし、何より本人が努力する。そういう選手の姿というのは、必ず周りの日本人の選手にも伝わるし、だから外国人選手でも、いわゆる助っ人ではなく本当の意味でチームの一員になれる」
これはウォーカーへのコメントではない。