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Mリーグの“ハイテクすぎる”麻雀卓(121万円)のヒミツとは? 通なファンは知っている“配牌の上下整列機能”が誕生するまで
posted2022/04/10 06:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
M.LEAGUE
4季目を迎えて、中継動画は頻繁に100万視聴超えを叩き出している麻雀プロリーグ、Mリーグ。当然、最先端の卓が使われており、配牌が上下揃って出てくることも、ファンにはよく知られている。
この“上下整列機能”付きの麻雀卓は大洋技研株式会社の「AMOS REXXIII」、税込121万円。かつて自動卓のある家に住んでいた私には“夢の卓”といっても過言ではない。
ついにここまで進化したか! とファンを唸らせた新機能は、鶴の一声から誕生した。
打つのも見るのも好きな同社の伊藤勝則社長が、あるときテレビ対局を見て呟いた。
「第1打、もっと早く打てないもんかな」
上下を揃えながら配牌を並べ直す、理牌の時間がもったいないと言い出したのだ。
企画営業課主任の古田晃基さんが言う。
「何事にも積極的な社長は、そこから配牌の上下を揃えることにこだわり始め、その熱意に開発室長が2年がかりで応えたのです」
プロが喜んだ“第2の理由”とは?
当初は卓内の“釜”に、画像認証システムを導入しようとしたが、サイズの問題から断念。だが、それまでも数々の機能を開発してきた開発室長は、磁力をもって難問をクリアする。
「牌にはもともと上下の真ん中に磁石が内蔵されていますが、それを2mm下げたのです」
釜に落とされた牌は4つの搬送チェーンをつたって4者の配牌となるが、そのチェーンに小型の光センサーと磁力センサーを設置。牌を検知してから内部の磁石を検知するまでの時間がわずかに長い牌は、逆さということになる。こうした牌を弾くことで、上下が正しい牌だけが配牌に送り込まれるようにしたのだ。柔軟な発想がもたらした勝利である。
新機能による、副次的メリットも生まれた。
「従来の卓では混ぜるときに一定の癖が出ましたが、チェーンを上がる牌の約半分が、もう一度釜に落ちるため、従来平面で混ぜていた牌が立体的にも混ざるようになりました。ドリブンズの園田賢プロや鈴木たろうプロは、上下が揃うことよりも、そのことをものすごく喜んでくれましたね」
時短と攪拌率向上を両立したAMOS REXXIII。ただ名機の誕生にも、社長は相変わらず厳しいようだ。古田さんが苦笑する。
「社長と打つとき、第1打に時間がかかると“上下揃ってるのに”なんて言われまして……」
自摸りたくて自摸りたくて仕方がない気持ちは、私にも痛いほどわかる。卓がどれだけ進化しても、雀士の性は変わらないのだ。