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松山英樹マスターズ優勝を支えた“チーム松山”の絆「みんな英樹が好きだから。彼を好きじゃないとやっぱり頑張れない」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAP/AFLO
posted2022/04/07 17:02
マスターズを制覇した松山英樹。グリーンジャケットを羽織った後、サポートしてくれた飯田光輝トレーナー、早藤将太キャディ、目澤秀憲コーチを呼び寄せ写真に収まった
最終日、一時は6打差をつけた松山は終盤4ホールで3ボギーを叩き、1打差で逃げ切った。早藤は辛くも踏みとどまれた要因に「目澤コーチとの取り組みの結果がショットのブレの少なさに繋がったんじゃないか」と新コーチの存在を挙げた。
年明けからチームに合流した目澤秀憲は一般のアマチュアからツアー選手まで見るコーチングのプロである。年は松山の1つ上。5年前に米国のインストラクター養成の権威であるTPI(タイトリスト・パフォーマンス・インスティテュート)最高水準の「レベル3」の資格を取得した。ゴルファーそれぞれの身体的特徴に応じた指導を得意とし、女子プロの河本結や有村智恵らも指導している。
松山は18年以降、自らのドローボールの弾道を理想とするものに近づけようと必死になっていた。クラブを頻繁に替え始めたのもこの頃である。「打てそうで、打てない」。そんな鬱屈した毎日にひと筋の光が射したのが昨年の秋だった。関係者を通じて日本にいる目澤と知り合い、まずオンラインで繋がった。
「こんにちは、松山英樹です」。ジュニア時代、日大ゴルフ部に在籍していた頃、遠くで眺めていたあの松山が、目の前の画面に映っていることが目澤は信じられなかった。もっと驚いたのは彼の熱っぽい話しぶりだった。ただその後、対面して会話を交わすうちに松山が主張する彼の感覚と、自分が知る最新理論との問に隔たりがあることも分かった。
理想と現実のギャップを理解させる
松山がキャリアで初めて契約したコーチとして、目澤はまずそのギャップを理解させようとした。今の打ち方では、あなたが打とうとしているボールは打てません――。弾道やクラブの動きを捉える計測器を用いて、選手が持つ感覚を可視化することで悩みの原因を解き明かしたのである。
モニターに映る計測結果、いわば現実を直視した松山の動きは早かった。「自分が正しいと思い過ぎていた」とすぐに方針転換し新しい動きの習得に取り組んだ。
「頭で理解した途端『そこに向かっていこう』とする気持ちは、僕が見てきた選手の中で一番でした。練習量も、成果においてもこちらの想像を上回るペースでこなせるのは彼のすごさだと思う」