炎の一筆入魂BACK NUMBER
《カープ開幕3連勝》9年連続ゴールデングラブ賞・菊池涼介の守備がさらにスゴくなった!? 規格外のグラブさばきと「いいところにいる」読みと経験
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2022/03/28 17:00
開幕3連戦では守備にバントなど渋い仕事が光った菊池だが、26日の2戦目では早くも本塁打を放った
「“予測していた”よりもはねなかった。低かったんです」
飛んでくる高さ、速度を予測してグラブを構えていたというのだ。当然バウンドが規則的な人工芝だからできることであり、「天然芝じゃ無理」と言い切る。仮に同じような打球が土と天然芝の本拠地マツダスタジアムで飛んできたらグラブは下から出していた。
上からグラブを出して仕留めたこの1つのアウトもまた、菊池の頭の中に経験としてインプットされたに違いない。
DeNAの左の好打者、佐野恵太が打席に入ると、菊池の守備位置は茶色から緑色に変わる。内野から外野への境界線をまたぐように天然芝の上へと後退する。
開幕戦の6回、先頭佐野の一、二塁間を抜けるかと思われた打球を何事もない平凡なゴロのように処理できたのも、絶妙なポジショニングがあったから。本人に聞いても「いいところにいた」と、事もなげに言った。
「2番菊池」の恐ろしさ
開幕3試合でリーグ2位タイの36捕殺を記録した広島の守備だけでなく、開幕カードで計28得点を奪った攻撃面でも、「2番菊池」が効いていた。
開幕戦から、昨季はチームとしてなかなか成功しなかったセーフティースクイズ(記録は一塁野選)を決めると、2戦目は絶妙な2犠打。1回無死一塁でファーストストライクを一塁側に転がし、3回は投手が二塁走者の無死一、二塁で球の勢いを完全に殺した完璧なバントを決めた。大量点の中でも細かな作戦をきっちりとこなすことで、攻撃を引き締めた。
「2番菊池」は、“つなぐ野球をする”という無言のメッセージとも言える。安定感ある先発投手のときには「序盤からバントしていく」という方針も聞く。菊池は開幕2戦目までに昨季の2犠打を上回る3犠打を決め、いずれも得点につながった。打線の潤滑油となり、活性化させた。
「出たサインに忠実にできるよう準備している」
サインにきっちり対応できるだけでなく、サインが出なくても状況に応じて自らバントや右打ちができる。昨季は1番や下位打線での起用もあったが、他球団の関係者も「菊池は何でもできるから、2番の方が嫌。守備側が考えさせられるから」と口にしていた。
攻撃的な2番を置く時代なのかもしれないが、長距離砲が少ない広島新打線の2番はやはり菊池が適任だろう。開幕3連戦のように攻守に輝けば、チームが明るく照らされる。
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