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《カープ開幕3連勝》9年連続ゴールデングラブ賞・菊池涼介の守備がさらにスゴくなった!? 規格外のグラブさばきと「いいところにいる」読みと経験
posted2022/03/28 17:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
声援を送ることができなくても、3万を超えるファンの反応は試合の流れを表している。3月25日から行なわれた横浜スタジアムでのDeNA×広島の開幕カードでは、赤い背番号33が何度も地元ファンの拍手をため息に変えた。
開幕試合から2試合連続二桁得点などで3連勝を飾った広島にあって、菊池涼介の存在感は際立っていた。9年連続ゴールデングラブ賞の名手には失礼かもしれないが、さらに守備に磨きがかかっている印象すら受ける。結果的に大差となった開幕2戦目も、勝負を分けたのは菊池の守備だった。
広島4−0のリードから1点を返された4回。なおも1死一、三塁から、DeNA宮崎敏郎の一、二塁間への鋭い当たりに、3万を超えるファンは思わず反応。一瞬響いた歓声はしかし、すぐに静かになった。
そこには、菊池がいた。
スタートを切った一塁走者の動きに合わせて二塁ベース方向へ動き、逆を突かれた形になっても、即座に切り返して頭から打球に飛び込み追いついた。三塁走者の生還は許したものの、抜けていれば、さらに1死一、三塁とピンチが広がっていた。菊池のプレーで2死二塁にとどめたことで、広島は2点リードを死守。直後の5回、先頭打者としてチーム1号ソロを放ち、流れを完全に掴んだ。
「若い選手と一緒に特守を受けて、投手陣と一緒に走ったりしてきたから足が動いているのかもしれない。求められていることを全うしようと思ってやっています」
控えめなコメント同様に、開幕3連戦では見た目には派手さのない好守がいくつもあった。
名手があえてセオリーを破った理由
20代の頃のような爆発的なスピードと躍動感溢れる守備力とはまた違う。読みと経験に裏付けされたポジショニング、そして捕球から送球までの流れるような動きは、年々洗練されているように感じる。
開幕戦の4回1死二、三塁での守備だ。宮崎の鋭い当たりにグラブを上から下ろすように捕球。何事もない平凡なゴロのように処理した。ただ、ゴロ捕球の際の基本は、グラブを下から使う。規格外と言われる菊池の守備の根底にも基礎がたたき込まれているだけに、珍しい動きに感じた。菊池はなぜグラブを上から出したのか――。