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BIGBOSSに3タテの洗礼…ホークスはなぜ、奇策に動じなかったのか? 逆転満塁弾を導いた“藤本采配の妙”《新庄劇場のウラ話も》
posted2022/03/28 17:03
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
KYODO
3月25日、福岡PayPayドームでの開幕戦セレモニーは、単体のショーとして入場料を払ってもいいくらい立派なものだった。
開幕セレモニー「新庄劇場」の舞台裏
18時4分、場内のLED照明がパッと消灯し暗転する。外野フィールドには多数のパフォーマーが登場。光と炎が幻想的な空間を生み出した。18時8分、まずはファイターズの選手がアナウンスをされ、三塁側ファウルラインに整列をする。続いてホークスの選手たちが地元ファンの拍手に包まれながら一塁側のファウルラインに列をなした。
そして18時16分、スタジアムDJの男性が一拍置いて、満を持したように声を発する。その絶妙な間が高揚感をさらに煽った。
「続いては両軍監督の入場です」
主役がついにお出ましだ。約3万5000人のファンを飲み込んだドームがざわめく。
「ルパン三世」のテーマが流れる中、スポットライトがまず三塁側のファイターズベンチに向いた。光の先にユニフォームを着た大きめのサングラスと赤いマスクの男性がいる。しかし、それは偽物だ。次は客席上段のスーパーボックスのバルコニー席に同じ格好の人物が登場するも、やはり影武者だった。今度はバックスクリーンの上だが、それもまた……。そして最終的に、パフォーマーが踊っていた時から中堅手定位置あたりに置かれていた箱が開くと、その中から「本物」の新庄剛志BIGBOSSが白煙に包まれながらド派手に登場。それはもう、イリュージョンの世界だった。
18分間、箱の中。「御本人に何度も確認しましたが」
割れんばかりの拍手に包まれる。しかし、ここは福岡。地元ホークスも負けていない。今度はライト付近で和太鼓の演奏が始まり、場内の空気がガラリと変わった。そして、角田信朗の「よっしゃあ漢唄」が流れる中、外野フェンスの一部分が開いて、藤本博史監督が神輿に担がれて入場してきた。まさに“笑撃”の光景に、キャプテンの柳田悠岐は大ウケ。藤本監督はその後「俺は緊張したけど、みんなは和んだと思うよ」と照れっぱなしだったが、BIGBOSSを上回る喝采と笑いを勝ちとっていた。
また、ホークス球団の演出担当者にも話を聞いたが、BIGBOSSは箱の中に18分間ほど潜んでいたそうだ。「御本人に何度も『大丈夫ですか?』と確認しましたが、『オッケーです』と笑っていました」。あと、担当者に訊ねたのがもう一つあった。例年のセレモニーでは事前に報道陣へ式次第なり台本が配布されるのだが、今年はそれがなかった。