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松山商で日本一の鬼監督が語る“選手に伝わる叱り方”「損得じゃなくて善悪で接する」「レギュラーだろうが補欠だろうが関係ない」 

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元永知宏

元永知宏Tomohiro Motonaga

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photograph byIchiro Sugino

posted2022/04/11 17:01

松山商で日本一の鬼監督が語る“選手に伝わる叱り方”「損得じゃなくて善悪で接する」「レギュラーだろうが補欠だろうが関係ない」<Number Web> photograph by Ichiro Sugino

“鬼”と呼ばれた名将・澤田勝彦氏が、42年間の指導者生活で貫いた「損得じゃなくて、善悪で接する」真意とは?

「最後まで甲子園には行けませんでしたが、勝っても負けても、納得できる試合をするようになりました。大会では3回戦止まりでしたが、練習試合では強豪校を圧倒することもあった。2018年夏の大会の1回戦では、延長戦12回まで粘って最後にサヨナラ勝ちするという勝負強さも発揮してくれましてね。2021年の夏、12人という少ない人数で、優勝した新田を相手に堂々と戦ってくれました。結果よりも、私の考えを理解して野球をしてくれたことがうれしかった。自分でも納得して、監督を終えることができました」

「理不尽と思えるような怒り方をしたことがあったかも」

 指導方法は変わっても、監督としての澤田は最後まで変わらなかった。

「北条に来て一番怒ったこと? もう、たくさんありすぎて(笑)。この子のためにならんということに関しては、体を張って指導してきました。

 監督を退いた去年の夏まで、ポイントポイントではよく怒ってましたよ。『これだけは教えたい』というものがあって、必死の思いでそうしてきたのかなと思います」

 選手たちがどれだけ澤田の意図を理解しただろうか。だが、いずれはわかってくれると澤田は思っている。

「42年間、選手からすれば理不尽と思えるような怒り方をしたことがあったかもしれません。陰で文句を言われることもあっただろうと思います。でも、誰からもクレームを受けるようなことはありませんでした。処分を受けるようなことにはならんかった。それは、選手たち、保護者の理解があったから」

教え子「レギュラーも補欠も分け隔てなく怒ってたでしょ。だから…」

 監督を退任したあと、多くの教え子から労いのメッセージが届いた。澤田は彼らとのやり取りのなかでひとつの答えを得た。

「監督をやめたあとに連絡をくれた教え子に『おまえらにはひどいこともしたのう』と言うと、『監督さんはレギュラーも補欠も分け隔てなく怒ってたでしょ。だから、みんながついていったんです』という言葉が返ってきたんです」

【次ページ】 「損得じゃなくて、善悪で選手たちに接する」

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