甲子園の風BACK NUMBER
“ドラ1の先輩”と比較されがちでも「小園さんは小園さん、自分は…」 佐々木麟太郎封じの市和歌山エースが強く言い切るワケ
text by
間淳Jun Aida
photograph byKyodo News
posted2022/03/26 06:00
153球を完投した市和歌山エースの米田天翼。強打者にも臆さない内角攻めが印象的だった
佐々木に対する期待と注目が集まる中、先発のマウンドに上がった米田は制球が定まらなかった。先頭打者には1球もストライクが入らず四球。続く打者には不運な形で安打を許し、無死一、二塁で佐々木を迎えた。
しかしここから、米田は小園を回想させる直球を見せる。
変化球が高めに浮いてストライクが入らず、明らかに佐々木が待っている直球で勝負したのだ。力で押し込み、最後は140キロの高めで空振り三振を奪った。4番の田代旭捕手にも直球を続け、空振り三振に斬った。打者に狙いを定められても、予測を上回る球威と伸びがあった。
米田は5番の小沢修外野手にこそタイムリーを浴びたが、初回のピンチを1失点でしのいだ。2、3回は無失点に抑えたものの制球が不安定なまま、序盤3イニングで球数は57球に上った。
非凡な修正力が見えた「低めに叩きつける」とは
そんな米田の非凡な修正力が見えたのは、4回のことである。
「ボールが抜けている感覚があったので、低めに叩きつけるイメージで投げました」
リリースポイントを確かめるように、先頭打者の初球にカーブを使う。見逃しでストライクを取ると、直球を1球挟んで再び103キロのカーブ。タイミングを外して左飛に打ち取った。カーブを効果的に使い、中盤以降は捕手がミットを構えるコースや高さに収まる直球も増えた。
スライダーやツーシームが最後まで安定しない中、直球とカーブに活路を見出したのだ。疲れが見えた9回は3点を失って1点差まで迫られたが、修正能力の高さを見せ「最後まで自信を持って直球で押せました。途中からは持ち味にしている投球のテンポとコントロールを出せてよかったです」と振り返った。
ベスト8をかけた2回戦の相手は明秀日立(茨城)。米田は強力打線の花巻東相手に、直球の質と修正能力の高さを証明した。
投手としての総合力を問われるのは次戦になる
ただ、投手としての総合力を問われるのは次戦になる。
明秀日立は1回戦で大島(鹿児島)に8-0で快勝した。打線は花巻東のような派手さはなくても、追い込まれてからファウルで粘って簡単にはアウトにならず、じわりじわりと投手へ圧力をかける。大会注目の左腕・大島の大野稼頭央投手の投球に食らいつき、もぎ取った四球を絡めて得点を重ね、大野には4回までに91球を投げさせているのだ。