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甲子園&阪神の応援でおなじみ「ファンファーレ」、発祥は天理高だった…! 顧問「いっちょホンマものを聴かせましょうか、と(笑)」 

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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photograph by天理高校吹奏楽部提供

posted2022/03/22 11:02

甲子園&阪神の応援でおなじみ「ファンファーレ」、発祥は天理高だった…! 顧問「いっちょホンマものを聴かせましょうか、と(笑)」<Number Web> photograph by 天理高校吹奏楽部提供

1959年、夏の甲子園初出場時の天理アルプスの様子

天理は攻撃の初回にも…「景気つけよう! と」

 本家天理の「ファンファーレ」には、どっしりとした低音のベースラインがあり、クラリネットやピッコロなどのトリル(2度違いの音を繰り返し吹く奏法)が加わり、重厚ながらもどこか華やかさも感じる。

 一方、多くの学校が演奏する、吉田氏がいうところの「阪神版に近い」バージョンは、複数の楽器が同じメロディを演奏する「ユニゾン」という奏法が主流。同じ曲でもまったく異なる印象を受ける。

 近年、天理は攻撃の初回にスローテンポの「ファンファーレ」を演奏する。ヒットや得点時のアップテンポな演奏と違い、重々しく威圧感まで感じさせる演奏だ。なぜ初回にこのような演奏をしようと思ったのだろうか。

「攻撃開始なので、景気つけよう! という感じでしょうか」(吉田氏)

ファンファーレにあった「幻の歌詞」

 ちなみに、同曲には歌詞があるということもほとんど知られていない。本家の天理も甲子園で歌詞を披露しているわけではないので、知られていないのも無理はないのだが、せっかくなので、この幻の歌詞を記しておきたい。

【「ファンファーレ」歌詞】

 てんり ナイン がんばれ
 てんり ナイン がんばれ
 てんり
 てんり
 がんばれ がんばれ がんばれ

 現在の高校野球は攻撃時しか演奏出来ないが、かつては攻撃時、守備時の両方とも演奏出来たことから、歌詞も2パターンある。上記は守備時の歌詞で、攻撃時は「がんばれ」が「かっとばせ」となる。

 “シェア率ダントツの事実”を作曲者が知ったら…

 高校野球の応援曲は、「あの学校のあの応援がカッコいいので、うちもやりたい」と野球部が吹奏楽部にリクエストをして広まっていくパターンが非常に多い。昔も今も、勝ち進んでテレビで何度も流れた強豪校の曲が全国の野球部に広まっていったが、ヒットや得点時の曲は、天理の「ファンファーレ」のシェア率がダントツ。日本一多くの学校が演奏する曲といえるのではないだろうか。

 近年は、「みんな天理のファンファーレをやるので、うちは他ではやっていない曲をやりたい」と、オリジナリティを出す学校も徐々に増えつつあるが、揺るぎないポジションを築いた「ファンファーレ」。原曲「マクシンカッキー序曲」作曲者のリチャード・ボウルズ氏が天国でこの事実を知ったら、さぞ驚くに違いない。

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