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《センバツ》沖縄から雪国に進むと聞いて不安だったけど…星稜のエース・マーガード真偉輝キアンを成長させた“辞退した先輩の帽子”
posted2022/03/22 06:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
温暖な気候の沖縄ですくすくと育った大型右腕が雪国・石川での厳しい冬を超えて初の甲子園に挑む。
第94回選抜高校野球大会に2年ぶり15回目の出場を果たした星稜高校(石川)のエースを務めるのは、マーガード真偉輝キアン(3年)。アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、186センチ90キロの恵まれた体格から力強さとキレを兼ね備えた球を投げ込んでいく。
筆者が彼と話すのは、侍ジャパンU-15代表以来の約2年半ぶりだったが、顔つきが精悍になっていたのは一目瞭然だった。
「牛乳が好き、夜10時には眠くなる」
中学3年生の時、宮城大弥(オリックス)を輩出した宜野湾ポニーズ(沖縄)のエースとしてポニーリーグ全日本選手権優勝に貢献。11月のU-15アジアチャレンジマッチ2019に出場する侍ジャパンU-15代表に選出され、すでに184センチ87キロの中学生離れしていた体格で最速138キロのストレートを投じていた。
183センチの父、168センチの母による遺伝の影響もあるが、中学入学後から毎日1リットル飲み始めた牛乳や、毎日8時間から9時間という睡眠も成長を促した。どちらも「身長を伸ばすため」としながらも、「牛乳が好きですし、夜10時くらいになると自然と眠くなるので」と自然体の頼もしさを感じた。
一方で、体はポッチャリとしていて走り方も不恰好だった。当時、小声で「練習はあまり好きじゃないです」と苦笑いしながら話しており、寒さの厳しい雪国の石川県の高校に進むと聞いて不安も覚えた。
ところが今の姿はエースそのもの。秋の北信越大会準々決勝の日本文理戦で8安打を許すも1失点完投勝利。さらに続く準決勝の富山商戦でも粘りの投球で4失点完投勝利を挙げて、チームをセンバツ出場に導いた。
最速はこの試合で出した141キロで、中学時代から3キロのみの向上だが、キレや球威は中学時代よりも飛躍的に向上している。また「武器は変化球で試合を作っていけるところです」と自ら話すように、カットボール、ツーシーム、フォーク、スライダー、カーブを投げ分ける器用さもある。
振り返れば、侍ジャパンU-15代表の時も鹿取義隆監督から助言を受けると、すぐにモノにしていたように、吸収力が高いのも特徴だ。