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浦和学院監督兼心理カウンセラー(31歳)が考える“叱り方わからない問題” 怒りを力に“変えられた”平野歩夢、しかし高校球児は… 

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kashimoto

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posted2022/03/18 06:01

浦和学院監督兼心理カウンセラー(31歳)が考える“叱り方わからない問題”  怒りを力に“変えられた”平野歩夢、しかし高校球児は…<Number Web> photograph by Yuki Kashimoto

センバツ開幕戦で登場する浦和学院。チームを率いる森大監督は「心理カウンセラー」の肩書も持つ。その理由とは?

「指導経験のない自分が、高校野球の現場に入ることになり、まずは生徒のメンタリティを学ぶ必要があると感じたんです。多様性が尊重され、個性に向き合った教育が重要視される中で教育を深く理解するためには、心理学が必要だと。僕が出会った教育学研究科の河村茂雄教授は、学級経営学の先生で小中学生のいじめや不登校、自殺、学級崩壊などをテーマに研究されている方でした。ゼミの仲間は学校の先生たちで、もう一度学び直しをするために集まった教育者たちだったのです。ここで、教育の奥の奥のところを学ぼうと思いました」

規律か、自主性か? 二項対立の先に…

 森監督は学校職員、野球部コーチを務めながら大学院に通い、2年がかりで壮大なテーマと対峙した。

 タイトルは「運動部活動指導者の指導行動における選手の主体性及び自律的な練習との関連と、選手のパフォーマンスとの関連に関する検討」。

 取材の現場で、自主性をはき違えて自分勝手な行動に走る選手がいる。その選手に対して「怒れない」「怒り方がわからない」と悩む指導者を見てきた。チーム運営に於いて、自主性と規律はセットで行うものだと私自身も感じていた。

 従来の統制的な指導(P型)と、選手の自主性・主体性を重視した指導(M型)。森監督はこの2つのバランスを鑑みた「PM指導行動理論」を研究したという。舌を噛みそうな専門用語の羅列がわかりにくいが、つまりこういうことだそうだ。

「Pは規律、管理。Mは自律、主体性。PとMのバランスには法則があって、どちらが強すぎてもダメなんです。時代や環境、生徒の資質などによって、このバランスは変化していくのですが……例えば、浦和学院はPとMのバランスは何対何くらいだと思いますか?」

「7:3……くらいでしょうか?」(筆者)

「正解です!」(森監督)

【次ページ】 どう叱るか? 具体例「規則を選手が破ったとします」

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