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甲子園の風BACK NUMBER
浦和学院監督兼心理カウンセラー(31歳)が考える“叱り方わからない問題” 怒りを力に“変えられた”平野歩夢、しかし高校球児は…
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byYuki Kashimoto
posted2022/03/18 06:01
センバツ開幕戦で登場する浦和学院。チームを率いる森大監督は「心理カウンセラー」の肩書も持つ。その理由とは?
「90年代の浦和学院は特にそうだったように思います。管理野球ですよね。それが強さの根拠だったのだと思います。この数字が非常に興味深かったので、私は2018年に全国の高校硬式野球部30校1065人の指導者、選手にアンケートを行いました。するとチームの特徴がPM型(目標達成と集団関係維持のどちらも強い指導者)、Pm型(目標達成>集団関係維持の指導者)、pM型(目標達成<集団関係維持の指導者)、pm型(目標達成と集団関係維持のどちらも弱い指導者)の4つに分類されました。
集めた回答の中には甲子園常連校もありました。一つ言えるのは、いまの時代はMの要素が評価されています。でも、そこに着目しすぎるのも良くないということ。結果を残しているチームはPとMのバランスが5:5に近いチームが多いということがアンケート結果でわかりました。心理学の言葉に『教えられたものは覚えているか忘れているかどっちかだが、自分で掴んだものは一生忘れない』という言葉があります。この言葉は前監督が日頃言っていた『人に魚を与えるのは簡単だが、魚の釣り方を教えなければ、人は空腹になって死んでしまう』に通じるものがあります。考える力がなければ、野球が終わったときに何もできない人間になってしまいます」
どう叱るか? 具体例「規則を選手が破ったとします」
「自主性を重視するなら、指導者も怒り方に工夫が必要」という話にもなった。アンガーマネジメントについても持論を持っている。2020年6月にパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行され、2022年4月からは中小企業で義務化されることが決まっている。感情をぶつけるだけの「怒る」を、相手の成長を促す「叱る」へ改善していくことは高校野球界の課題と一致している。
「『怒り』は人間の重要な行動の一つなんです。『選手のモチベーションを上げたい』、『選手に逆境を跳ね返す力をつけて欲しい』。もともとはそういう感情から起こるもの。悪だと決めつけるのではなくて、どう感情をコントロールするかが大事なんですよね。うまくなって欲しいから怒る。でも、脅迫的な怒りは子どもの思考を停止させ、成長を止めてしまう。これではチームは強くなっていきませんよね」