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“女優による団体”アクトレスガールズが方向転換、選手たちのその後は…? ユニット旗揚げのSAKI「プロレスラーとしての決意表明」
posted2022/02/26 11:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
ここ数年の女子プロレス界のトレンドは“芸能界からの挑戦”だ。
古くはマッハ文朱、ミミ萩原が全日本女子プロレスで人気を博し、逆にクラッシュ・ギャルズのようにレスラーが歌手デビューするという例もあった。
21世紀になると“グラレスラー”愛川ゆず季がスターダムで一時代を築く。現在、活躍している中で有名なのは赤井沙希(DDT)だろう。東京女子プロレスのインターナショナル・プリンセス王座を持つ伊藤麻希は福岡のアイドルグループLinQ出身。3月の両国国技館大会で伊藤に挑戦する荒井優希はSKE48のメンバーだ。アイドル、タレントの経歴を持つ選手は、女子プロレス界の一大潮流と言っていい。
その流れを大きくしたのが、2015年旗揚げのアクトレスガールズだ。その名の通り“女優たちのプロレス”がコンセプト。演劇の世界を中心に芸能活動経験者を続々とスカウトし、デビューさせた。
スターダムの6選手はアクトレスガールズでデビュー
芸能人がプロレスラーに。偏見は当たり前のようにある。だが人材発掘、育成能力には確かなものがあった。業界トップの団体スターダムにも、中野たむをはじめアクトレスガールズでデビューした選手が6人もいる。
演じたり歌ったり踊ったり。人前で“表現”をすることに慣れているし意欲的だから、リングでのアピール力も高い。芸能界で成功できなかった者なら、「プロレスの世界で名を上げてやる」というモチベーションも強みになる。
プロレスにのめり込むと、芸能界との“兼業”が前提のアクトレスガールズでは満足できなくなる選手も出てくる。もっと本格的にプロレスがしたい、試合数を増やしたい。そう考えた結果、団体を離れて、たとえばスターダムに移籍する選手も出てくるわけだ。自然なことだと言うしかない。
アクトレスガールズの方向転換…選手は悩んだ
アクトレスガールズも方向転換を決めた。“プロレス団体”としての活動をやめることにしたのだ。2021年いっぱいでプロレス興行ブランド、BeginningとColor'sが解散。2022年からは『アクトレスリング』というイベントがスタートした。プロレスの技、試合形式、大会フォーマットを使ったエンターテインメント・パフォーマンス。他のプロレス団体と交わることもない。完全に“ここだけ”の世界。それは差別化にもつながる。
ただ選手たちにとっては悩みどころだった。アクトレスガールズへの愛着はもちろんある。その一方、これまでの活動の中でプロレスやプロレス界に対する気持ちも強くなっていた。