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<東京マラソンプレビュー>新コースで読む、五輪後の勢力図。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byKYODO/Shunsuke Mizukami/KYODO/Nanae Suzuki/JMPA
posted2022/02/25 11:00
左から吉田祐也、土方英和、鈴木健吾、E・キプチョゲ。昨年2月に日本新記録をマークした鈴木や、24歳の土方と吉田ら勢いのある若手、さらには既にMGC出場権を持つ細谷らが注目株か。東京五輪で金のキプチョゲも参戦
パリ五輪まで、残された時間は少ない
この大会は来年秋に開催予定のMGC(パリ五輪のマラソン日本代表選手を決める選考レース)の指定レースの一つなので、まだ出場権を得ていない井上大仁らは最低限そこをクリアしたいと思っているでしょう。加えて、この夏にオレゴンで開催される世界選手権の選考もかかっていますから、日本代表として世界で戦いたいと思っている選手たちもモチベーションは高いはず。すでにMGCの出場権を獲得している細谷恭平、高久龍、上門大祐らはもうひとつ上のレベルの記録を狙ってくるのではないでしょうか。
2024年のパリ五輪を見据えると、意外なほど残された時間は少ない。大迫が現役復帰を宣言して、ますます日本代表争いが楽しみになってきました。今回の東京マラソンには出場しませんが、彼も当然、パリの代表を狙っているはずです。
もし僕が彼の立場だったら、東京五輪で入賞はしたけどメダルは取れなかったし、日本記録保持者でもなくなって、煮え切らない気持ちがあると思う。テレビの解説も一緒にやっていますが、ああいう客観的な立場でレースを見ると、もっとこうすればいいのに、ああすれば良かったというのが見えてくるものなんです。
東京マラソンが事実上の日本一決定戦に
大迫の復帰は、現役選手たちへの良い刺激になるでしょうね。確実にマラソンを成功させているし、後半のまとめ方が抜群に上手い。アメリカで練習をやってきて、独自の情報を持っていることも強みです。
ただ、陸上選手にとってはタイムがすべて。今はもう日本記録保持者ではないし、これまで他の選手たちはちょっと上の存在に見ていたかもしれませんが、今は追いつき、追い越さないといけないライバルとして見ていると思います。
今、国内のマラソン大会がびわ湖、福岡と次々に終了していって、記録を狙える大会というと東京しか残っていない。そもそも世間一般の注目度も高いし、賞金も高い。かつての福岡がそうであったように、これからは東京マラソンが事実上の日本一決定戦のような位置づけになっていくのでしょう。その緒戦で誰が、どんなタイムを出して、パリ五輪の主役候補に躍り出るのか。5分台、もしくは4分台の好記録を期待したいですね。