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<東京マラソンプレビュー>新コースで読む、五輪後の勢力図。
posted2022/02/25 11:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
KYODO/Shunsuke Mizukami/KYODO/Nanae Suzuki/JMPA
解説 金 哲彦
早大時代は箱根駅伝で2度優勝、卒業後はマラソンで活躍。陸上や駅伝の解説でおなじみ。
3月6日の東京マラソンは、記録に注目して見ると面白いと思います。国内の男子マラソンのレベルがすごく上がっているし、今回は現世界記録保持者のキプチョゲがやってくる。大会記録を狙える選手ですから、国内で2時間2分台のレースが初めて見られるかもしれません。
キプチョゲにはついていけなくても、おそらく1km2分58秒とか、それくらいのペースメーカーが日本人のトップグループにも付くのではないでしょうか。このペースで最後まで行ければ、記録としては2時間5分台が狙える。前回大会で大迫傑が記録した、日本人最高記録(2時間5分29秒)の更新も視野に入ってきます。
じつは今回から少しコースが変わって、より記録が出やすくなったのも見逃せないポイントです。終盤の直線区間がやや短くなり、田町付近で早めに折り返すことで向かい風による失速を抑えられるようになった。田町辺りの直線道路はこの時期、強い北風(向かい風)が吹くことが多かったので、そこが短くなったのは選手にとって嬉しいでしょうね。
日本記録保持者の鈴木健吾より面白い存在
今回の招待選手の中で注目は何と言っても日本記録(2時間4分56秒)保持者の鈴木健吾です。日本人として初めての4分台。とくに終盤の追い込みは見事でした。ただ、記録を出した昨年の「びわ湖毎日マラソン」は、後半に追い風が吹くなど気象条件が良すぎた。異なる条件下でもう一度あれに準ずるタイムが出せるかどうかで彼の評価は定まってくるでしょう。
面白いと思うのは、鈴木よりも2歳年下で24歳の土方英和です。同じびわ湖で鈴木に次ぐ2位に入り、日本歴代5位のタイムで走っている。走力も高いし、彼は若手の有望株ですね。ここ数年は、2月のハーフマラソンで好走した選手が東京でも良い記録を出す傾向が強いですが、彼は「全日本実業団ハーフマラソン」でも良い記録で走っているので楽しみです。
土方を始め、一昨年の福岡国際マラソンで優勝した吉田祐也といった若手がどこまで大迫の記録に迫れるか。もし超えることでもあれば、一気に男子マラソンの世代交代が進むような気がします。