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「アイツはもう役者じゃない」と言われても… 萩原聖人が俳優と麻雀の“二刀流”に挑み続ける理由「競技としての地位を上げたい」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byYuki Suenaga
posted2022/02/20 17:04
現在も多くの映画やドラマで活躍する萩原聖人。アイドル的な人気を博した若手時代から、その演技力は高く評価されている
「少し前に出演したある映画について、ベテランの映画プロデューサーが語る動画がYouTubeにあったので見てみたら、僕の話になったんですよ。『萩原聖人は出ただけで空気感が変わるところがすごい』と褒めていただきつつも、『麻雀ばかりやってないでもっと映画に出てほしい』と……。すると相手役の方が『麻雀をやることで(芝居の)幅が広がる可能性もある』と言ってくれて、僕は無言でそれを聞いている(笑)。ありがたい話ではあるんですが、少し複雑な気持ちになりました」
麻雀のプロになっても、役者としての仕事をおろそかにするつもりはまったくない。もちろん、どれほど俳優業が多忙であっても、それを麻雀の結果の言い訳にするつもりもない。だからこそ、二足のわらじではなく「二足の革靴」という表現で覚悟を示した。それでもなお“二刀流”を快く思わない人がいることは「受け入れるほかない」という。
「麻雀をやっていることでなくなった仕事もあるでしょうし、『アイツはもう役者じゃない』という監督も絶対にいると思います。それはある意味ですごく正しくて、反論の余地はない。僕自身もすべてがうまくいくとは思っていないですし、そのリスクも承知のうえでプロ雀士になりましたから」
専業のプロはほんの一握り…麻雀界の現実とは
Mリーグが盛り上がりを見せ、オンライン上での対局(ネット麻雀)も活況を呈するなど、ここ数年で多くの新規ファンを取り込んだ麻雀界。しかし国内に1000人以上存在すると言われるプロ雀士のなかで、麻雀だけで生計を立てることができているのは、ほんの一握りにすぎない。各競技麻雀団体のプロになったからといって、定期的な収入が保証されるわけではないからだ。
Mリーグに参戦する全8チームの計32選手には、最低年俸として400万円が保証される。とはいえシーズン後の契約更改では選手の入れ替えも行われるため、その椅子も決して安泰ではない。
萩原も、多くのプロ雀士たちのシビアな現実をその目で見てきた。
「僕の知るかぎり、会社員との兼業でプロをやっていたり、麻雀荘に携わりながらやっていたり……という人がほとんどだと思います。将棋や囲碁のようにプロが専業に近い形で食べていけるようになるには、まだまだ時間がかかるかもしれません」
現在のMリーグは、日本プロ麻雀連盟、最高位戦日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀協会、麻将連合、RMUという5つの競技麻雀団体から、各チームが獲得を希望するプロ雀士をドラフトで指名し、選手として契約を交わすという構造になっている。Mリーグ以外でも盛んに交流が行われるなど、各団体の関係は決して険悪ではないが、萩原は「才能が分散してしまうのでは」と問題点を指摘する。