ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
支配下から育成、投手からの転向…「チームで一番へたくそな外野手」DeNAの4年目・勝又温史の過去イチ明るいシーズンイン
posted2022/02/07 06:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PHOTO
無名の存在。だが、これから歩む道のりを鑑みれば、行く末が気になって仕方のない選手であることは間違いない。
プロ4年目、支配下登録から育成契約へ。そして投手から野手へ。まさに“リボーン”といってもいいだろう。
「久しぶりに心から野球が楽しいなって感じているんです」
横浜DeNAベイスターズの勝又温史はそう語ると、笑みを湛えた柔らかい表情を見せてくれた。今はただ、野球をプレーする喜びを体いっぱいに享受している。
勝又の名を聞いてピンとくる人は決して多くはないだろう。彼のことを知るのはDeNAのファンか、あるいは出身校である日大鶴ヶ丘高時代の活躍を知っている人たちぐらいかもしれない。
粗削りながら150キロを超すストレートが魅力の右腕は、2018年のドラフト会議で4巡目指名されDeNAに入団。そのポテンシャルの高さから将来を嘱望される存在だったが、昨シーズンまでの3年間、一軍で登板する機会はなかった。
150キロ右腕の低迷の理由
課題はコントロールにあった。球威はあるものの制球がばらつきフォアボールが多くなってしまう。2019年の1年目はイースタン・リーグで17試合に登板したが、48イニングで39四死球と乱調もあり防御率は7.13。勝又は改善を図るべく2年目にフォームの改造を行うが、これがさらなる混迷を極める皮肉な結果になってしまう。勝又は苦闘していた当時を振り返る。
「1年目のシーズン終わりにフォームに違和感があって、気持ちよく腕が振れなくなったんです。それを改善しようとオフにいろいろと取り組んだのですが、上手くいかないままコロナ禍もあって時間が過ぎていってしまって……」
立て直すことの難しさ。一時はキャッチボールもままならないほどになってしまい、勝又いわく「イップスのような状態」だったという。迷いや葛藤と向き合いながら、勝又は自分の不甲斐なさを痛感した。
「自分よりボールの遅いピッチャーが一軍で活躍している。自分には速球があるかもしれないけどフォームが固まらない。だったら速球を捨てれば自分も一軍に行けるかもしれない。自分の持ち味を活かすのか、それとも新しい自分を作るのか、そこですごく迷いました」