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《センバツ》 聖隷クリストファー落選は「もしかしたら…と」 東海地区の甲子園出場経験監督が一刀両断した“2つの疑問”とは
text by
間淳Jun Aida
photograph byKyodo News
posted2022/02/02 17:10
取材に対応した聖隷クリストファーの上村監督。球児たちの気持ちを思うと……。
「監督でセンバツ出場を決めた時、発表前は選ばれるかどうか五分五分か、どちらかというと可能性が低いと思っていました。後日、この大会ではありませんが、センバツの選考に関わった経験のある方から、『センバツは人口やチーム数の少ない県が出場枠を独占するのを避けたい雰囲気がある。選考委員の中で力のある人の発言で場の雰囲気が流される傾向がある』と言われました」
「東海3県」の特殊性が理由?
高野連は聖隷クリストファーの落選理由に「地域性」を否定し、「甲子園で勝つ可能性を公平かつ客観的に議論した」と説明している。
だが、この指導者は「今回の選考が、どのように行われたのかは分かりません。ただ、自分のチームが選ばれた時は、地域性が考慮されたのかなと思っていました」と語る。そして、「東海地区」の特殊性も指摘する。
「センバツでは静岡県を含めた4県が東海地区になっていますが、このエリアには東海3県という言葉があります。愛知、三重、岐阜の3県で、静岡は入っていません。東海地区の代表が静岡県の2校だけになることに高野連は抵抗があったのではないかと推測しています」
「東海3県」は日常的に使われている。天気予報では静岡を除いて「東海3県の天気です」と伝えられる。新型コロナウイルスの対策を政府に要望する際は東海3県の知事が連携したり、共同メッセージを発表したりする。新規感染者数が報じられる時も「きょう東海3県で新たに確認された感染者は」などと表現され、静岡県が東海に含まれないケースは多い。
昨春の第93回大会までに複数ある東海地区の出場枠を1つの県で占めたのは、東邦と愛工大名電の2校が出場した2005年の愛知県だけ。静岡県から2校出場した大会は何度かあるが、別の県からも選出されている。人口もチーム数も多い“東海地方の象徴”愛知県以外に、東海枠の独占は前例がない。
投手力=失点数を選考理由とすることには……
また、この指導者は選考理由についても異論を唱える。
高野連は大垣日大を選んだ理由に「投手力」を挙げているが、聖隷クリストファーと比較して圧倒的に失点が少ないわけではない。東海大会の成績を見ると、大垣日大の1試合当たりの失点数は平均4.67点で、聖隷クリストファーは5.25点。0.6点ほどしか違いがないだけに「高野連の説明は後付けに聞こえます」と一刀両断した。
そして、「そもそも、どのチームも失点数を競っているのではなく、勝つために相手より1点多く取る方法を考えています。大垣日大の失点が東海大会3試合で1失点だけというくらい圧倒的な投手力だったとしても、失点数を選考理由とすることには疑問です。高野連は選考委員会で賛否が分かれたと説明していますが、今回の選考に関しては拮抗する時点でおかしいと感じています。委員の中で力のある人が、大垣日大を推していたのではないかと勘ぐってしまいます」と続けた。