月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
「明訓が負けたよ!」「ドカベンは反面教師」スポーツ紙局次長から名球会捕手まで野球オジサンたちが語った水島マンガへの尽きせぬ思い
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/02/01 11:00
水島新司氏の逝去を大きく報じたスポーツ新聞各紙。今の紙面のつくり手も読者の中心層も、水島マンガど真ん中世代に違いない
東スポの運動部デスク・溝口拓也氏は《草野球でファウルチップが真後ろに飛ぶと「ファウルが真後ろに飛ぶということは、タイミングは合っている」という「じっちゃん」(山田太郎の祖父)の言葉を決まって思い出したものだし、いわき東の緒方のように鉄アレイのボール部分を人さし指と中指ではさんでフォークの練習もした。》(1月19日付)
以下、延々と思い出語りが続く。ああ、みんなこうやって野球が好きになって各々の道に進んだのだなぁ。とにかく各紙記者の水島作品への熱量が紙面からほとばしっていた。読んでいて自然に笑顔になった。
では実際にプロになった人はどうか。名捕手だった谷繁元信氏は山田太郎を反面教師にしたという。
《すごく打つけど、足が遅くて、ずんぐりむっくり。だから昔は動きが遅くて、体がごつい、プラス肩がいい選手がイコール捕手になった。高校1年の夏から本格的に捕手になったが、動けるタイプが理想で、いわば反面教師にしていた。そういう思いが、自分を成長させてくれた部分はある。》(日刊スポーツ1月18日)
おそるべし水島作品!
未来を予見していた水島先生
タブロイド紙の日刊ゲンダイは『水島新司さんの「球界の大予言」漫画の世界が次々と未来に実現』(1月19日付)。
漫画で描いたことが現実にも起きたとして事例をいくつも挙げている。
【5打席連続敬遠】
「ドカベン」の山田太郎が高2春の甲子園で、江川学院の投手・中二美夫から5打席連続敬遠される。1992年夏、星稜高の松井秀喜が明徳義塾戦で5打席連続四球と勝負を避けられる。
【50歳の現役投手】
「野球狂の詩」で活躍した岩田鉄五郎の初登場時の年齢は50歳。2015年に中日の山本昌投手が達成。
【二刀流】
大谷翔平の大活躍に沸いている現在だが、「ストッパー」主人公の三原心平が1番センターとストッパーの両方をこなす二刀流選手として描かれていた。