炎の一筆入魂BACK NUMBER
「タイプが全く違う選手と一緒にやることで…」大瀬良大地と森下暢仁、カープの2人のエースが“異例の合同自主トレ”に踏み切ったワケ
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2022/01/31 11:00
自主トレーニングで楽しげにランニングする大瀬良(右)と森下。昨シーズンは二人あわせて18勝だった
大瀬良もかつて、先輩の前田健太(ツインズ)の自主トレに志願参加した。当時はまだ経験が浅く、開幕投手を争う立場になかった。だがその後、プロでキャリアを積み、勝つ喜びや負ける悔しさ、チームの力になれぬもどかしさなどについて、若手に教えを求められる存在となった。
伝統ある背番号14(大瀬良)、エース番号とも言える18(森下)だが、広島の14番と18番が、そろってニ桁勝利したシーズンは半世紀以上もさかのぼる。
チームの命運を握る二人のエース
大瀬良と森下の場合も、昨季は森下が、一昨季は大瀬良がニ桁に届かなかった。今季、両者がそろってシーズンを引っ張っていくことが広島の命運を握っていると言える。
特に大瀬良の存在は広島投手陣には大きな意味を待つ。昨季も約1カ月の離脱中、一軍若手投手から連絡が入り、戦列復帰後も多くの若手が大瀬良のもとに集った。ローテーションの柱であり、投手陣の精神的支柱。だが、右肘をクリーニング手術した一昨年だけでなく、ニ桁勝利した昨年もエースは戦線を離脱した。そしていずれのシーズンも、エースの離脱を機にチーム成績は下降線をたどった。
「僕が一番分かっています。いなくなって負けちゃって、(悪い)流れができているのは本人が一番痛感している。本当に年間通して僕が働けば何とかまだまだ勝負できたんじゃないかなって思っていますし、それだけ精神的なものになっているのだと感じた。そこは意識して、離脱しないように。年間通してやっていけるように準備しています」
自覚と責任は痛いほどに、感じている。
ローテーション投手の中でも、軸となる開幕投手の離脱はチームの戦いを不安定にさせる。6月開幕となった20年のセ・リーグでは、ヤクルト石川雅規が7月中旬に上半身のコンディション不良で離脱。7月下旬には大瀬良が離脱し、8月にはDeNA今永昇太がチームを離れた。最終順位はヤクルト6位、広島5位、DeNA4位。奇しくも開幕投手が離脱した順だった。
フルシーズン投げられれば、自身の結果が自ずとついてくる。これまでのキャリアが証明している。沖縄の地でともに第一歩を踏み出した森下と広島の両輪となって走り続けることで、チームは安定した戦いを続けられる。まずは春季キャンプが始まれば、大瀬良と森下は開幕投手を争うことになる。合同トレーニングは、大瀬良と森下にどんな成果をもたらすだろうか。