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中村俊輔「闘莉王のヘディング技術には驚いた」「久保建英は凄い」稀代の名キッカーが思い描く“日本代表とセットプレーの未来”
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/01/26 17:01
セリエAレッジーナ時代、フリーキックの個人練習に励む中村俊輔
加えてヘディングでゴールする技術を上げるトレーニングはもっとあってもいいかもしれない。日本代表では(田中マルクス)闘莉王と一緒にやってきて、ヘディング技術の高さには驚かされた。頭のどのポイントに、どれくらいのインパクトで当てていけばいいのか。キッカーの位置を近くしたり、蹴らないで手で投げてミニゴールに決めさせたり、専門外なので何とも言えないが、闘莉王を見ていると伸ばす余地はまだまだあるようにも感じた。
キッカーの質は自分で上げていくしかない。僕が小さいころに見てきた(木村)和司さんやジーコからも、特にアドバイスされたことはない。つまりは“自分で磨け”ってことなんだと思う。でも、ちょっとしたアドバイスが一生ものになることはあるから、今後そういうことが言える環境になったらいい。
過日、ある番組で久保(建英)くんと対談する機会があった。20歳でスペイン1部チームのキッカーを務めているというだけで凄い。自分はレッジーナ、セルティックで務めることはできたけど、エスパニョールではキッカーとして定着できなかったわけだから。
ボールをもっと蹴りたいと思っても、欧州は居残りで個人練習することが難しい環境。自分の場合は日本で蹴り込んで(イタリアに)渡ったから、そういった違いはある。ただメッシだってグアルディオラに言われてから、急に意識して蹴るようになってあれだけうまくなった。
キッカーを務めていれば、いずれ引っ掛かるものが生まれてコツをつかんでくるはず。そうなるといろんな広がりが出てくる。セットプレーはメンタルに拠るところも大きい。この年代からやれているんだから、経験値を積んでいけばそれだけ自分の財産にもなる。
日本代表がワールドカップでベスト8以上に進んでいくには環境面が大切だとは思う。選手のみならず監督、コーチも海外にチャレンジしてほしいし、子供たちを教える指導者のレベルももっと上げていく必要があるだろう。とはいえJFAが誕生して100年、進化のペースは悪くない。じっくりと日本化を図っていけばいい。今の方向性は間違っていないと信じている。<前編から続く>
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