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ドカベンは「原辰徳世代の甲子園で清原超え+ノムさん級捕手」 あぶさんは王さんや落合級…推定成績に見る《水島新司漫画の偉業》 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2022/01/19 17:01

ドカベンは「原辰徳世代の甲子園で清原超え+ノムさん級捕手」 あぶさんは王さんや落合級…推定成績に見る《水島新司漫画の偉業》<Number Web> photograph by Kyodo News

「ドカベン」こと山田太郎。彼ら登場人物や水島新司先生がマンガで残した実績はとてつもなく偉大だ

 そういうリアルをとことん追求した舞台装置で、「ドカベン」こと山田太郎や、「あぶさん」こと景浦安武、水原勇気など現実を突き抜けたヒーロー、ヒロインが活躍したのだ。

 水島野球のファンタジーが多くの人に愛されたのは「リアルな野球」と言う舞台装置がしっかりしていたからだろう。

水島野球の登場人物を「記録」で見てみると

 さて、記録を扱う筆者としては、水島野球の代表的な登場人物について「記録」で語ってみたい。

 実は、この分野では先人がいる。豊福きこうさんだ。水島漫画などスポーツ漫画に登場する選手の成績を推測も交えて数値化した。1992年に発刊された『水原勇気0勝3敗11S』(情報センター出版局)は大きな話題になり、筆者も購入した。

 本のタイトルにもなった水原勇気は東京メッツに1975年ドラフト1位で入団した。

・水原勇気
15試0勝3敗11S 9.1回 責6 率5.79

 女性初のプロ野球選手、水原は1976年、東京メッツの投手としてセの公式戦に出場。漫画では開幕3戦目の広島戦の7回から救援登板し、無失点で完了。プロ入り初勝利を挙げたことになっているが、豊福さんは規則上はメッツ先発の日の本盛の勝利投手の権利は残っているとして、勝利はつけなかった。水原はその後、魔球ドリームボールを編み出して「1球救援」で活躍し、11セーブを挙げた。

原辰徳と同世代、山田太郎は甲子園で清原超え?

 この本には『ドカベン』登場人物の甲子園成績も載っている。

・山田太郎
24試77打48安20本51点0盗 率.623

・殿馬一人
24試45打15安1本3点2盗 率.333

・岩鬼正美
24試68打21安7本13点2盗 率.309

・里中智
24試20勝1敗0S 220回 責33 率1.35

 水島新司だけでなく野球漫画は登場人物のすべての試合を克明に描いているわけではない。ハイライトのシーンだけを取り上げるので、他の部分は類推するしかない。漫画の中でアナウンサーが「山田太郎、通算打率7割1分です」などというのを手掛かりに数字を出すのだが、これは相当難しかったようで、豊福氏は複雑な計算をして成績を算出している。

 この書籍が出た当時、実際の甲子園最多本塁打は清原和博(PL学園)の13本塁打、最多勝は吉田正男(中京商)の23勝だが、ドカベン山田太郎は清原の記録を上回っている。

 なお水原勇気と山田太郎は1958年生まれの同級生。巨人、原辰徳監督と同世代ということになっている。

あぶさん、山田太郎のNPB成績を推定で算出してみる

 残念なことに、豊福きこうさんは、2010年に亡くなっている。山田ら以降の世代についても追いかけてはいたが、未完に終わった。

 そこで筆者は『あぶさん』の景浦安武と『ドカベンプロ野球編』の山田太郎のNPBでの通算成績を推定値で算出してみることにした。

【次ページ】 苦労人あぶさんは61歳にして史上初の打率4割!

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