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ドカベンは「原辰徳世代の甲子園で清原超え+ノムさん級捕手」 あぶさんは王さんや落合級…推定成績に見る《水島新司漫画の偉業》 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2022/01/19 17:01

ドカベンは「原辰徳世代の甲子園で清原超え+ノムさん級捕手」 あぶさんは王さんや落合級…推定成績に見る《水島新司漫画の偉業》<Number Web> photograph by Kyodo News

「ドカベン」こと山田太郎。彼ら登場人物や水島新司先生がマンガで残した実績はとてつもなく偉大だ

 20代半ばでプロ入りした景浦は40歳近くまでレギュラーではなく、控え選手の悲哀を感じさせた。その一方でドカベンはデビュー年に本塁打王、打点王、2001年には三冠王、翌年にはNPB記録の162打点をマーク。しかも捕手としての記録である。2004年FAで架空チームの東京スーパースターズに移籍。2007年には楽天のルーキー田中将大から2000安打を打っている。

「ドカベンプロ野球編」は1995年から2003年まで、翌年から「ドカベン スーパースターズ編」さらに「ドカベン ドリームトーナメント編」が連載されたが、最後のドリームトーナメント編の時制は2012年のまま留まっているため、翌年以降の成績はわからない。

 首位打者1回、本塁打王7回、打点王7回、三冠王1回。捕手としては野村克也二世と言えなくもないが、かなり現実離れした存在ではあった。

『MAJOR』や『グラゼニ』、『おお振り』へと時代が

 ただ、残念なことに、こういう遊びはもうできなくなっている。

 近年のNPB球団はライセンスビジネスを収益の柱の一つにしているため、肖像権や著作権を厳しく管理するようになり、以後の漫画は、肖像権料を払わなければ実在のチームを描くことはできなくなった。水島作品は特例として徴収まで2年間の猶予期間が与えられたが、晩年の水島漫画に架空のチーム、登場人物がたくさん出るようになったのはそのためだと思われる。

 水島新司の登場で、野球漫画のリアリズムは飛躍的に向上した。『MAJOR』は、作者、編集者がアメリカに何度も取材して、NPBとMLBの野球界の実情に基づいた世界を描いた。『グラゼニ』は、すべて架空のチーム、登場人物だが、プロ野球の実情を極めてリアルに描いている。『おおきく振りかぶって』は、「投球過多」「指導法」など高校野球の抱える問題を、データも含めて詳細に提示している。

 こうした後発の野球漫画は「水島漫画」を起点として、それぞれの立ち位置を決めていったのではないかと思う。

 振り返って、水島新司は何より「大人の漫画家」だった。その描く世界は「良質の日本映画」のようだった。

 歴史に残る野球界の大選手たちは、まるで黒澤明の映画の登場人物のように風格があり、美しかった。そして「あぶさん」をとりまく市井の人たちは山田洋次の映画の人物のようにコミカルで温かかった。

 筆者は『あぶさん』の初期の連載で描かれた「祝杯」(単行本では第6巻所収)は、日本漫画史に残る名作だと思う。漫画はこれからも発展し続けるだろうが、水島新司のような美しい野球漫画を描く人は、これから出てくるだろうか?

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