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「このスポーツは足し算式になってしまった」フィギュア元女王・佐藤有香が語るジャッジへの本音…日本女子の未来に希望がある理由
posted2022/01/20 11:01
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Akiko Tamura
1994年に、日本人として史上2人目の世界チャンピオンになった佐藤有香氏。現在はコーチとして、米国デトロイトを拠点に活躍している。全米選手権にコーチとして来ていた彼女に、現在の女子について、フィギュア全般について語ってもらった。
「このスポーツの進化のスピードがあまりにも速くて、自分自身追い付いていけていないという感じです。女子の選手たちが4回転や3アクセルを日常的に練習するようになった。本当にすごい時代になったと感心しています」
佐藤氏が世界タイトルを手にしてから、28年。その変化を振り返り、まずそう口火を切った。
ロシア女子がとびぬけている理由
ここ数年で急激にジャンプ技術が進化したが、女子ではロシアが他を圧しているのが現状だ。その理由は何なのだろうか。そう聞くと、佐藤氏は「日常の練習を見ずには何とも言えませんけれど……」と前置きをして、こう語り始めた。
「旧ソビエトの時代に選手だった人たちが日々のトレーニングで叩き込まれ、さらにその人たちに育てられたスケーターたちが今コーチになっています。そのシステム下で、選手を発掘するためのオーガニゼーションがきちんと出来上がっている感じがする。スポーツ生理学とか心理学とか、選手を選抜してグループで教育していくシステムが、しっかり役立っているんじゃないかと思います」
日本との決定的な違いは、どのようなことなのだろうか。
「一流選手を育てるにあたり、選手としての生活を優先してトレーニングしているのではないかと思います。例えば日本みたいに普通の学校に行きながらそういう生活というのは、難しいと思う。ロシアは選手として出てくるまでに、アスリートとしての英才教育が成り立っているんじゃないかと思うんです」
男子でアジア系選手が有利な点とは
その一方で現在、男子の世界トップは、ほとんどアジア系が独占している。これは身体的なものなのか、精神的なものなのだろうか。
「私は両方だと思っています。一つにはアジア系の骨組みが、やはり軽い。いくら男子が筋力を鍛えて大人になってからまとまってくるとはいえ、やはり4回転、中国あたりでは5回転を練習している選手もいると思うのですけど、そういう反復練習をする生活になると体がコンパクトなほうが効率的。アジア系の体の方が一般的に長持ちするんじゃないかなと思います。ロシアの選手でも上の方に出てきているのは、コンパクトな選手が多い。平均して小さい選手のほうが日々の負担が少ないんじゃないかなと思います」