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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
母親の死に「岡田さんはすぐブラジルに戻れ、と…でも」悲しみを乗り越えW杯初出場 呂比須が語る現役秘話とFW育成への提言
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJun Tsukida/AFLO
posted2022/01/11 11:02
フランスW杯出場にすべてを尽くした呂比須ワグナー。その功績は日本サッカー史に残っている
「イエス。いずれ欧州で活躍して、日本代表でも中心選手になると思っていた」
岡田さんのマネジメントは今、大いに参考にしている
――日本で出会った監督で最も印象に残るのは?
「岡田(武史)さん。彼のことは、日本リーグ時代から知っている。彼が古河電工、僕が日産でプレーしていて、よく対戦した。体が強く、後ろから問答無用でガチーンと当たってきて、怖い選手だった(苦笑)。
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1998年ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選で、最初は加茂(周)さんのコーチだったけど、(加茂監督が解任されて)途中から監督。すると、それまでとは打って変わって選手とは距離を置き、一気に監督らしくなった。
非常に聡明で、選手の心をつかむのがうまい。彼のチームマネジメントのやり方は、監督となった今、大いに参考にさせてもらっている」
――1998年W杯アジア最終予選のイラン戦(第3代表決定戦)の4日前、あなたのお母さんがガンで亡くなったとき、「すぐにブラジルへ戻れ」と言ってくれたそうですね。
「そうなんだ。でも、僕が帰っても母親が生き返るわけじゃない。必死に戦っている仲間を置いて、チームを離れるわけにはいかない。だから、『いえ、残ります』と答えた。
その後、チームメイトが入れ替わり立ち替わり僕のところへ来て、励ましてくれた。『日本人は本当に人情味がある。日本人になってよかった』と改めて思い、『日本のため、死に物狂いでプレーしよう』と心に誓った」
ストライカーを育てるために必要なこととは
――日本からは、決定力の高いストライカーがなかなか出てきません。どうすれば優秀なストライカーを育てることができるのでしょう?
「試合で実際に起きる状況を想定し、マーカーをおいて、実戦的な練習をすること。そして、いつどこからでもゴールを狙うんだ、というメンタリティーを植え付けること」
――世界有数のアタッカー生産国であるブラジルと日本のストライカーの違いは?
「ブラジル人はとにかくハングリーで、抜け目がない。子供の頃から『自分がゴールを決めて勝つんだ』という気持ちを誰もが持っている。そして、『こうなったら必ず点が取れる』という得点パターンを必死に磨くんだ。
日本人は、かつては逞しさが足りない選手が多かったが、最近はがむしゃらにプレーする選手が増えている。技術的には優れているので、あとは高いレベルでもまれて、結果を出すだけ。まあ、それが一番難しいんだけどね(笑)」
――日本の選手育成に関して助言はありますか?