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「杖が2本ないとつらい」“黒のカリスマ”蝶野正洋(58)が治療を行う現在を告白…“人前で杖は恥ずかしい”と思わなくなった深いワケ 

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/12/31 11:12

「杖が2本ないとつらい」“黒のカリスマ”蝶野正洋(58)が治療を行う現在を告白…“人前で杖は恥ずかしい”と思わなくなった深いワケ<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

プロレスラーとして、バラエティに啓蒙活動など様々なチャレンジを続ける蝶野正洋に、その原動力や現在の心境について聞いた

正式な「引退」を宣言しない理由

――蝶野さんはプロレスの試合から離れてもうずいぶん経ちますけど、正式な「引退」ということは考えていないんですか?

蝶野 リングを離れるにあたって、「引退試合をきちんとやっておきたいな」という気持ちはどこかにあったんですよ。ただ、引退したあとも周りは「プロレスラー」として見るだろうし、バラエティや啓発活動もプロレスラーとしてやっているわけだから、引退もなにもないのかな、と。

――リングに上がってなくても間違いなく「プロレスラー・蝶野正洋」ですもんね。

蝶野 やっぱりそういう看板で見られますからね。そういう意味では、試合はしなくても「生涯プロレスラー」なんだろうな、と。また、芸能とか他の仕事でしばらく離れていると、またプロレスにバックしたくなるんですよ。やっぱり俺の“ふるさと”だからでしょうね。

――よそ行きじゃない本来の自分に戻れる場所みたいな。

蝶野 ただ、ふるさとではあるんだけど、もう“街並み”が変わりすぎちゃってるから、自分なんか完全に浦島太郎なんですよ。そのなかで同期の武藤敬司がまだ図々しくベルトを巻いて頑張ってるのが、唯一の救いだよね(笑)。

「杖をつくのが恥ずかしかった」蝶野を変えた天龍源一郎の姿

――では今後も、リングには上がらなくても「プロレスラー・蝶野正洋」として頑張っていく、と。

蝶野 そうだね。試合をしなくても、レスラーの生き様みたいなものは見せられると思うんだよね。こないだゴルフのシニアトーナメントでトークショーがあって、俺と天龍(源一郎)さん、長州さん、武藤さんがゲストで呼ばれたんだけど。ステージ代わりに建てられたリングに行くまで20メートルくらいあって、長州さんと武藤さんは歩いてそこまで行けたけど、俺は杖がないとそこまで行けなくて、人前で杖はつきたくなかったんだけど、普段2本杖のところを一応1本杖で歩いてね。で、その次の天龍さんはもっとゴツい杖を2本使ってもなかなか前へ進めないんだよ。

――天龍さんも腰の手術を何度もされてますもんね。

蝶野 天龍さんがあまりにも歩くのに時間がかかるもんだから、最初は「天龍ー!」なんて半分冷やかしみたいな声をかけてたゴルフファンのギャラリーも、途中から静まりかえってね。それでもとにかく一生懸命歩いてるから、ホントの声援に変わっていったんだよ。「頑張れ!」「もう少しだ!」って。それを見て、俺は武藤さんに「次、俺があれやるわ」って言ったから。かなりいい見せ方があるなと(笑)。

――痩せ我慢して1本杖で出ていくのは損だと(笑)。

蝶野 天龍さんの娘さんに聞いたら、前も何かのイベントで必死に歩いて入場したら声援に変わったことがあって。それで天龍さんも味をしめたらしくて、頑張って一人で歩くと。

――そこはさすがプロレスラーですね。「いまの俺の見せ場はこれなんだ」と。

蝶野 そうそう。でも、あの姿には俺もちょっとジーンときちゃって、歩くのが精一杯の人間が、それでも一生懸命に歩いてる姿っていうのは、素晴らしいと思ったね。だから俺も、杖をついていることは何ら恥ずかしいことじゃないんだと気付かされたし、自分の頑張ってる姿を見せて、何かを感じてもらえたらと思いますよね。

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《方正ビンタでおなじみ》蝶野正洋が明かす『大晦日ガキ使』収録の知られざるウラ側「俺が一番『笑ってはいけない』なんだよ(笑)」

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