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“新マスク”の下から苦悶の表情が…タイガー・クイーン大苦戦の真相とは? 勝負の来年は“女ダイナマイト・キッド”が登場か
posted2021/12/14 17:05
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
今年デビューし、オールドプロレスファンも巻き込んで大きな話題を呼んだ“女性版タイガーマスク”タイガー・クイーンが年内最終戦を迎えた。
初代タイガーマスク・佐山聡とジャガー横田、2人のレジェンドが指導する、正体不明の覆面レスラー。7月のデビュー戦で山下りな、2戦目で佐藤綾子、さらに彩羽匠と女子プロレス界トップクラスの実力者を次々に下してきた。タッグマッチでは男子の大ベテラン、越中詩郎とも対戦している。
これは現代のマット界において破格のキャリアというしかない。師匠であり生みの親である佐山聡も、12月9日の『ストロングスタイルプロレス』新宿FACE大会でクイーンの活躍について「上出来です」とコメントしている。
「天才かもしれないですが、努力もしています。1つの技を2時間くらいかけて練習してますから。もちろん素質も素晴らしいです」
「ぺらんぺらん」クイーンへの対戦相手の評価
この日、クイーンが対戦したのはライディーン鋼。JWPの後継団体PURE-J所属で、団体のシングル王座を獲得したこともある。
「大きくてパワーがある、それだけでなく飛べる」
というのがジャガーの評価。鋼はクイーンとはタッグで対戦しているが、向き合う場面が少なく「物足りなかった」と言う。対戦決定の記者会見では、クイーンへの厳しい評価も語っている。
「もっとぶつかってきてほしいと思うくらいぺらんぺらんでしたね。力がなさすぎる」
新宿FACEのリング、鋼は物足りなさを払拭するかのように奇襲に出た。ゴング前の攻撃だ。しかも高さのある投げっぱなしジャーマンスープレックス。これでクイーンは一気にペースをもっていかれた。
そこからキャメルクラッチ、バックブリーカー、逆エビ固めと腰を中心に攻め込む鋼。クイーンはダイビング・クロスボディやコーナーから場外へのムーンサルト・アタックなど空中殺法を見せるが、鋼の反撃でどれも単発になってしまう。
“新マスク”で見えたクイーンの苦しさ
クイーンは新しいマスクでリングに上がっていた。以前はアゴが隠れるタイプだったが、今回は口元が大きく開いた形。それだけ表情も伝わりやすい。
プロレスは技を競い合うだけでなく感情を表現するものでもある。表情が見えにくい覆面レスラーは、ファンの感情移入のしやすさという面で不利でもあるだろう。ましてクイーンは“正体不明”だ。これまで、公の場では一言も発していない。何を考え、感じているのかを一切、伝えてこなかった。