サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「自分がいらんことをした」エスパルス主将・権田修一が明かす、残留争いのなか当たってしまった“嫌な予感”
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/12/26 11:00
12月4日、最終節でセレッソ大阪に逆転勝ちでJ1残留を決めた清水エスパルス。キャプテンの権田がサポーターへの挨拶の場に立った
「自分を必要としてくれた」とFC東京時代の指揮官である大熊清GMからラブコールを受けて、清水エスパルスの一員になることを決めたのは1年前。ポルトガル1部ポルティモネンセから期限付き移籍で2年ぶりとなるJリーグ復帰を果たした。
選手を大幅に入れ替えた新生エスパルス。新たにミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任し、チームづくりに時間が掛かることも、それまではある程度苦戦を強いられることも覚悟した。
徳島ヴォルティスに0-3で敗れた第7節(4月4日)から9試合続けて勝利から見放された。低空飛行を続けながらも、チームが一つずつ積み上がっている感覚を持つことはできていた。
ADVERTISEMENT
ただ、あのときばかりは違った。
ベルマーレと引き分けて感じた“危機のシグナル”
第25節(8月21日)、降格圏内の17位にいる湘南ベルマーレとのアウェーマッチ。勝ち点3差開いているとはいえ、負けてしまえば立場が逆転する重要な一戦であった。連敗中のベルマーレは決して調子がいいわけではない。その相手に1-1のドローで終えたことに、権田は危機のシグナルをいち早く感じていた。
「負けなくて良かったなみたいな感じがあった。勝てなかったことがネガティブじゃなくて、サッカー自体良くないのに負けなかったことがポジティブになっているときこそ一番危ない。時間を掛けてきれいにサッカーができるようになってきて、新加入の選手が入ってきてこれまでできなかったこともやれるようになった。ポジティブな部分はたくさんあるんですけど、何か大事な部分が抜け落ちてしまっているような感覚がありました。言葉にするなら、深みがないっていうんですかね」
嫌な予感は当たる。
次節、鹿島アントラーズに0-4と大敗を喫し、10月16日の柏レイソル戦からは3連敗。残留争いから抜け出すどころか当事者になってしまう。その3連敗目が権田の古巣であるFC東京との一戦(11月3日)だった。常に沈着冷静な守護神が、ここでは違う顔を見せた。セットプレーから3失点して、0-4で敗れた。
「自分がいらんことをしましたね」
いらんこと、とは? そう問うと苦い表情のまま言葉を続けた。