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「自分がいらんことをした」エスパルス主将・権田修一が明かす、残留争いのなか当たってしまった“嫌な予感” 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJ.LEAGUE

posted2021/12/26 11:00

「自分がいらんことをした」エスパルス主将・権田修一が明かす、残留争いのなか当たってしまった“嫌な予感”<Number Web> photograph by J.LEAGUE

12月4日、最終節でセレッソ大阪に逆転勝ちでJ1残留を決めた清水エスパルス。キャプテンの権田がサポーターへの挨拶の場に立った

 引き分け以上であれば自力残留が決まる一戦。

 昨季と同様に最終盤に入ってバトンを受け取った平岡宏章監督のもと、ここまで3連勝とチームの調子が上がってきただけにスタジアムのムードも最高潮に達していた。

 日本代表の守護神から荒い鼻息は聞こえてこない。むしろいつもの試合と同じように落ち着いていた。

 前半35分だった。左コーナーキックからファーで待つ大久保嘉人にシュートを打たれ、竹内涼の体に当たってオウンゴール。権田は手で弾いたが、ゴールの外に掻き出すことはできなかった。とはいえ先制されただけのこと。力なくピッチに倒れ込むチームメイトに、すぐ立ち上がるように促していた。

 気にするな、と言わんばかりに。

 権田はこう振り返る。

FC東京時代の苦い記憶が刻み込まれている

「先に1点取られたときが一番、危ないなって思っていました。しかもオウンゴールで、個人がダメージを受けてしまう状況でもありました。竹内選手はこれまでずっとハードワークしてきた選手。試合に出られない時期がありながらも最後はまた(スタメンを)つかんだ。だからそんなことで下を向く必要なんてないですから。試合終わった後、彼から“ごめん”と謝られましたけど“ごめんじゃない。1年間よくやったじゃないか”と返しました」

 権田はFC東京時代の2010年シーズンにJ2降格を経験している。既に降格が決まっていた京都サンガとの一戦、前半に先制点を奪われ「ハーフタイムで修正できないまま後半に入って」終盤に追加点を奪われた苦い記憶が刻み込まれている。

 失点の後こそが大事。

 GKのちょっとした立ち居振る舞いが、チームの士気にも微妙にかかわってくる。いやいやこれからでしょ。そう言わんばかりのたたずまいが、チームメイトの背中を押していた。前半アディナショナルタイムに鈴木義宜が同点ゴールを奪うと、後半6分には西澤健太が左足で鮮やかにミドルシュートを叩き込んだ。最後方から仲間たちを頼もしそうに見つめる彼がいた。

【次ページ】 ベルマーレと引き分けて感じた“危機のシグナル”

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権田修一
清水エスパルス

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