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「カメラに抜かれていたらヤバかった」「僕、若干、泣いていました」権田修一が残留をかけた試合中に思わず涙したワケ
posted2021/12/26 11:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
KYODO
権田修一の視線は、2人に送られていた。
J1残留を懸けたセレッソ大阪との12・4最終節。2-1とリードしたまま、後半42分にベンチメンバーの25歳、宮本航汰、23歳、立田悠悟が交代でピッチに入ってきた。宮本は14試合ぶり、立田は10試合ぶりとなる出場だった。
「もしあのときカメラで抜かれていたら、やばかったです。僕、若干、泣いていましたからね。試合中に泣くなんてあり得ない。でもあのときばかりは……」
キャプテンとして年長者として、チームメイトのことは自分なりに見てきたつもりだ。宮本も立田もシーズン序盤に先発のチャンスはもらえていた。しかしながら定着できず、ベンチ外になることも少なくなかった。
「エスパルスに一番足りないものを持っている」
「まず宮本選手で言うと、1年通じてネガティブな行動も発言もない。ずっと“僕はまだまだなんで”と練習でやり続ける姿を見てきました。一度、彼に言ったことがあるんです。“試合に出ていないところから出るようになったときよりも、出ていたところから出られなくなったときの練習のほうが成長できるよ”と。僕も経験しましたし、そっちのほうが自分の課題が明確になってくるので。気持ちが折れることなくやり続けたのは本当に凄いなと陰ながら見ていました」
もう一人の立田は、また違うタイプだと語る。
「あれだけ素直に喜怒哀楽というか自己表現できる選手って、今の時代なかなかいない。純粋にアツいし、実はエスパルスに一番足りないものを持っている選手でもあるんです。だから自分がうまくいってないときにテンションが下がると、どうしてもそこが見えてしまうこともありました」
セレッソ戦の前節、浦和レッズとの試合に向けた練習で、立田の変化を感じたことがあったという。
権田の表情がスッと柔和になる。