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千葉監督は、なぜ時代と逆行する「地味でキツい練習」を課したのか? バレー天皇杯初優勝に迫った堺ブレイザーズの意識改革
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byJVA
posted2021/12/21 17:00
惜しくも天皇杯準優勝に終わった堺ブレイザーズ。近年、リーグ優勝から遠ざかっているが、日本代表入りも期待されるOH樋口裕希(2番)ら戦力も整い、強化が実り始めている
堺のOBであり、元全日本のアウトサイドヒッターである千葉進也が、堺の監督に就任したのが今年6月のことだった。千葉は「まずは選手の意識を変えたい」と長年、負けが込んでいたチームの改革に乗り出した。最初に取り組んだのが、個人の技術力をアップさせることだった。
コーチ兼任の千々木が振り返る。
「千葉さんが監督に就任してすぐのミーティングで『このチームに最も足りないのは個人技だ』と言われました」
千葉監督はまず、練習方法を一新した。ボールに触る時間を増やし、それもスパイク、ブロック、レセプションなど、それぞれのプレーの反復練習に多くの時間を費やした。一見、時代に逆行したメニューで「地味でキツい練習ばかりだった」と千葉監督自身も振り返る。
「昨年まではリードしていても、少し追いつかれると、まるで負けているようなムードになってしまうシーンがたくさんありました。そのせいで焦り、余裕がなくなってミスをし、自滅してしまう。まずはそこを変えたかったんです」(千葉監督)
負けることに慣れるというと表現は悪いが、そうやって自信を失ったチームを変えるには『これだけの練習をしたのだから』と自信を持ってコートに立つことが大事だと千葉監督は断言する。メンタルを鍛え、意識を変えるのに最も必要なのは、確かな技術を習得することだと考えたのだ。
アウトサイドヒッターに課したこと
まずアウトサイドヒッター陣に課したのが、常に3枚のブロックがある状況で、ハイセットを打つ練習だった。ブロック板を使って壁を作り、相手コートに目標物を置いてその位置をねらう。
基礎中の基礎とも言える練習だ。
天皇杯の決勝こそ途中でベンチに下がったが、リーグ戦や天皇杯の準決勝まで安定した働きを見せていたアウトサイドヒッターの高野直哉は言う。
「アタックを打つときはブロックの指先をねらう、通過点を高くしてコート奥をねらうなど、シンプルなことなのですが、より強く意識するようになりました。夏場、試合がない時期にスパイクの打ち込みをしたんですけど、その際、監督からは『こういう風に打ってみれば』などと指導をしてもらいました。それを実戦で試して『これは決まるな』と思った打ち方をずっと続けています。
そのせいもあって、スパイクを打つ際の引き出しは昨シーズンより増えた気がします。力だけで押しても限界がある。でも引き出しが多ければ、その都度、相手ブロッカーの策を見ながら打つことができますから」