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松本人志の予想「M-1。波乱やな」→4年目ももに「3年後優勝顔」 M-1で王道しゃべくり漫才は“逆襲”できるのか、注目は金属バット?
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byM-1グランプリ事務局
posted2021/12/20 17:25
錦鯉の優勝で幕を閉じた2021年のM-1グランプリ。初出場のコンビが5組出場するなど、来年への期待も高まった大会となった
もっとも2本目のネタ「割り込み」に関しては、設定がやや難解だっただろうか。1本目の審査で、センターマイクの前から移動せずに話芸で勝負している点を賞賛されたことで、やりにくさもあったかもしれない。2本目は、ボケの畠中悠が3役を演じ、珍しくセンターマイクから離れるシーンのあるネタだったからだ。
ファイナルステージの3組では、個人的にはインディアンスと思ったが、激戦を制したのは、2年連続決勝進出の錦鯉だった。
勝因は、ネタの構成(「合コン」/「猿を捕まえる」)がシンプルで、笑いもシンプルだったことだろう。それも、昨年に輪を掛けたバカバカしさで。
バックボーンを切り離すことは難しい
錦鯉のネタは、どうしてもそれまでの苦労込みで見てしまうところがある。
ただ、M-1が人生を懸けた勝負である以上、バックボーンを切り離すことは難しい。もちろん面白いことが大前提だが、芸には芸人の人間性や人生が滲み出るからだ。
ほんの数年前まで母親に小遣いをせびっていた中年(ボケの長谷川雅紀のほう)が、「そろそろ潮時かなと思っていた」40歳のときに7歳下の渡辺隆に誘われて新コンビを結成。50歳にしてM-1王者になる――。
この姿を見て、30代、40代でくすぶっている芸人は何を思うだろう。40代であろうと新しいコンビを組み、M-1に挑戦する芸人も出てくるかもしれない。
あるいは、このネタであれば自分にも書ける、演じられると思う若手芸人も多数いるかもしれない。
長く続けること、バカをやり切ることは難しく、センスと根性のいることなのだが。