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「今年は過去最高か、反対に過去最低の大会になるかも」4年連続M-1審査員のナイツ塙宣之が大会直前に語った“採点基準”
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byJIJI PRESS
posted2021/12/19 06:00
2019年7月23日、京セラドーム大阪で行われた巨人対ヤクルトにゲストとして登場し、漫才を披露したナイツ。ボケの塙宣之(左)は4年連続でM-1グランプリ審査員を担当する
あくまでも評価基準は「面白いかどうか」
しばしば、「M-1は競技漫才」と批判的に言われることもある。笑いに点数をつけることは可能なのか? 主観を排した客観評価は可能なのか? 塙には独自の見解がある。
「M-1はスポーツではないと僕は思います。あえて言うならば、漫才をスポーツのように見せることに成功したコンテンツです。だからこそ、M-1はこれだけ世間の人が注目する人気番組になりました。フィギュアスケートと同様に、点数をつけることで次第に競技化するのは当然のこと。審査する方も、される方も競技だと思って参加しているわけです。それを理解した上で、漫才師はあの舞台を目指し、視聴者は誰が優勝するのかに注目しているわけですから」
2001年の大会スタート以来、途中のブランクを挟みつつ多くの芸人がブレイクを果たした。2018年の霜降り明星のように、「経験」よりも「新しさ」が重視されたこともあれば、2010年のスリムクラブのように、あえてスピードを求めない「斬新さ」が話題となったこともあった。もちろん、塙にも彼なりの「採点基準」がある。
「基本的には“僕にとって面白いかどうか”が基準です。難しいのは審査する以上、差をつけなければいけないことですね。最初の3組目までは“もう1本見たいかどうか”を意識して採点するけど、脱落者が登場し始める4組目からは、“誰を最終決戦に残したいか”が基準になります。それでも、点数の差をつけるのは難しいですけどね」
さらに、大会本番前に考慮するのが、「決勝進出者のネタを事前に見ておくかどうか?」ということ。事前にできるだけ情報を仕入れておく方がいいのか、それとも先入観なしの白紙の状態で目の前の漫才の出来を評すればいいのか?
「事前にネタを調べた方がいいのか、何も知らないまっさらな状態で本番当日を迎えた方がいいのかは、毎年悩むことなんです。オール巨人師匠のように、ずっと以前から芸人たちを見ている方だと、“以前と比べて、ここが変わった、進化した”って評論もできると思うんですけど、僕は初見で10組の漫才に触れて、その瞬間の感想を大切にしようと思っています。それだと瞬間的にいいコメントを残すのは難しいんです。でも、コメントうんぬんよりも、“新鮮な気持ちで笑いたい”っていう思いの方が強いんです。だから、今年もなるべく事前にネタを見ないようにしようと思っていますね」