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“若林のツッコミが強烈すぎた”オードリーに授けた助言とは? 渡辺正行が明かす「吉本以外の芸人がM-1で苦戦するワケ」
posted2021/12/18 17:01
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph by
Yuki Suenaga
過去6大会で審査員を務める渡辺は、東京の笑いの登竜門『ラ・ママ新人コント大会』というライブをおよそ月1回のペースで、35年にわたって主宰してきた。『ラ・ママ』に出演した“教え子”たちとは、M-1グランプリ決勝でたびたび再会を果たしている。
これまでに見てきた若手芸人の数は数千組
「敗者復活からオードリーが上がってきたときは、ちょっと感慨深いものがありましたね。だからといって贔屓はしないですよ。すごく面白くて高得点を付けましたけど、肩入れは絶対にしない。『THE MANZAI』で審査員をしたときはいつも見ていた磁石に票を入れなかったので、大会後に『入れてくれると思ったのに』って言われちゃいました(笑)。
決勝進出で一番驚いたのはトム・ブラウンですね。その年は審査員をしていませんでしたが、テレビの前でドキドキしていました。『こいつら本当に大丈夫なのか?』って。あいつら、気合が入り過ぎると喉を潰すんですよ。練習の段階でも全力で声を出すんで(笑)」
近年も2019年のM-1がきっかけで大ブレイクしたぺこぱや、今年決勝に進出したモグライダーが『ラ・ママ』の舞台を多く踏んでいる。このお笑い専用ではない小さな地下劇場は、ウッチャンナンチャン、バナナマン、ネプチューン、さまぁ~ず、バカリズム、東京03など、数えきれないほどの売れっ子芸人を輩出している。関東の芸人たちに場数を踏ませたのは、間違いなく『ラ・ママ』の功績だ。
「『ラ・ママ』のオーディションは大変ですよ。最近では各事務所から選ばれた芸人が何組か来てネタ見せをする形になりましたけど、ちょっと前までは毎月60組くらい見ていました。だいたい昼過ぎから途中休憩をはさんで夜までずっと若手のネタを見て、1組10分くらいかけてアドバイスをするんです。いや、ダメ出しなんてそんな大層なものじゃないですよ。何千組見たんだろう? 正確な数字はもうわからないですね(笑)。
オーディションが始まる前に『僕はアドバイスするけど、取り入れるか取り入れないかは自由ですよ』って芸人さんたちに伝えるんです。だって上の人から意見を押し付けられるのって嫌じゃないですか(笑)。芸人はみんな『自分たちが一番面白い』って信じているわけですし。なので、明るく見せた方がいいとか、声のトーンを合わせた方がいいとか、客観的な意見を言うだけです。教えているなんて意識はないですよ」