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「今年は過去最高か、反対に過去最低の大会になるかも」4年連続M-1審査員のナイツ塙宣之が大会直前に語った“採点基準”
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byJIJI PRESS
posted2021/12/19 06:00
2019年7月23日、京セラドーム大阪で行われた巨人対ヤクルトにゲストとして登場し、漫才を披露したナイツ。ボケの塙宣之(左)は4年連続でM-1グランプリ審査員を担当する
2021年は過去最高レベルか、過去最低の大会に?
先日発売された塙の新刊『野球と漫才のしあわせな関係』(ベースボール・マガジン社)の「はじめに」において、彼は「野球はお笑いに似ていて、お笑いは野球に通じている」と述べた。同書は熱心なジャイアンツファンで有名な彼ならではの、野球への愛情に満ちあふれた一冊となっている。
この本の中で、塙は2本の新作野球漫才を披露している。そのうちの1本はナイツの代名詞でもある「ヤホー漫才」で「大谷翔平」をテーマとしたものだ。思えば、ナイツが世間の注目を集めるきっかけとなったのが2008年M-1のヤホー漫才だった。この年、最終決戦まで進出したものの、優勝はできなかった。
「2008年の敗因は僕の中で明確です。M-1って、その年の一番いい状態の漫才師が優勝する大会なんです。この年、僕らはヤホー漫才が評判になってかなり露出が増えていたんです。野球で言えば、“ちょっと投げ過ぎだぞ。少し休めよ”と言いたくなるぐらい。そうすると、お客さんにとっては新鮮味がなくなるんですよね。もしも本気でチャンピオンを目指すんだったら、少し露出を控えて肩を休めつつ、M-1本番に体調万全で臨んだ方がよかったんですよ。その点は今でも反省しています」
以降、2009年、2010年と連続で決勝進出を果たしたものの、いずれも優勝には手が届かなかった。
「自分を信じてやればよかったんですけど、いろんな人のアドバイスを受けてそれを採り入れたり、考えすぎたりしたことで、自分たちのフォームを崩しちゃったんですよね。今から思えば普段通りでよかったし、ヤホー漫才をとことん突き詰めればよかったんです。でも、ヤホー漫才で優勝できなかった。だから“もっとボケを詰め込もう”とか、“違うスタイルに挑戦しよう”と考えたことで、普段とは違うリズムになっちゃったんです」
自身の反省を踏まえて、塙は続ける。
「2008年のナイツや、2019年のミルクボーイのように自分たちのスタイルがあり、フォームが定まっているコンビは決勝初進出で優勝できないと厳しいのかもしれないですね。さて、今年はどんな大会になるんですかね。今年の決勝進出者の並びを見たときに、はたしてレベルが高いのか低いのか、よくわからないんです。ひょっとしたら、過去最高の大会になるかもしれないし、反対に過去最低の大会になるかもしれない。僕自身も、本番当日を楽しみにして迎えたいと思います」
注目の2021年M-1決勝戦は12月19日18時34分から生放送される。はたして、どんな大会になるのか? 塙宣之はどんな審査をするのか? 審査員席にも注目したい。
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