「今年は過去最高か、反対に過去最低の大会になるかも」4年連続M-1審査員のナイツ塙宣之が大会直前に語った“採点基準”

　年末の風物詩、漫才師たちの真剣勝負――。いよいよ今年もM-1グランプリが19日に放送される。現役バリバリの漫才師であり、普段は「演者」でありながら、この番組では「評者」を務めるのがナイツ塙宣之だ。

「審査員を務めて4年目になるけど、芸人仲間にはよく思われていないですよね（笑）。でも、僕らナイツはこの大会がきっかけで世に出ることとなったわけだし、審査員として呼ばれている以上は恩返しのつもりもあるし、自分のためにというよりは、漫才協会のためであり、東京芸人代表という意識があります。だから、たとえいろいろ批判されようが、芸人から嫌われようが出させていただきたいと思っています」

漫才師が漫才師を評価する難しさ

　塙による芸人論、芸道論として大ヒットした『言い訳　関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』（集英社新書）において、彼は「M-1は100メートル走」と唱えている。10～15分の持ち時間を与えられている寄席での漫才を1万メートル走とするならば、4分間の舞台を一気に駆け抜けるM-1の世界は100メートル走だというのだ。

「M-1の歴史はスピード化の歴史でした。4分間にどれだけボケ数を突っ込んでいくかという方向に進んできました。でも、最近ではスピードよりも、いかに速く熱量を持てるかが勝負になってきていますね。時間が短いからすぐに熱量をマックスにしなくちゃいけない。話芸をじっくり聞かせるのがマラソンや長距離走だとしたら、瞬発系の笑いが求められるM-1の世界はやっぱり、短距離走なんでしょうね」

浅草の純喫茶「ブロンディ」にて、相方の土屋伸之と撮影　©BUNGEISHUNJU

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　塙は言った。「たとえいろいろ批判されようが」、と。お笑いの最前線に立つ彼が、M-1では審査員として審査、評論する立場にある。「芸人が芸人を評すること」に気後れしたこともある。それでも彼は誇りと自負を持って、「与えられた役割にきちんと応えたい」と考えているという。

「僕には、人一倍ネタを書いてきたという自負があります。たとえば、僕はグルメレポーターにはなれません。単に“美味しい”とか“不味い”とか感想を言うことはできても、“このスパイスが隠し味になっている”とか、“こんな手間をかけて作られている”というのは、自分で料理を作っている人じゃなければわからないと思うんです。でも、漫才については、他人のネタでも“彼はこういうことがしたかったんだな”とか、“この笑いは新しいな”とか、自分でたくさんネタを書いているのでわかるんです。漫才をバラバラにひも解いて分析することができるんです。その点は自信を持っていますね」

　それは、自負を込めた力強い口調だった。

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