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ロックンロールとしてのベースボールBACK NUMBER
“クールな音楽球団オリックス”という独創性 「歓喜の歌」「若者のすべて」「終わらない歌」…過激で鮮烈で豊かなセンス
text by
スージー鈴木Suzie Suzuki
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/12/26 17:04
パ・リーグを制覇し、日本シリーズでも激闘を見せたオリックス。その本拠地に鳴り響く音にも注目したい
2019年に私は、『週刊ベースボール』誌で17年間連載した(当時。連載は継続中)、野球関連音楽についてのコラムをまとめた『いとしのベースボール・ミュージック』(リットーミュージック)という珍奇な本を出したのだが、その中で取り上げた234曲の中の「ベストナイン」の1曲として『SKY』を選抜したほどだ。
「負の遺産」からのスタートだったオリックス球団
以上、長々と書いたが、言いたいことは、オリックス球団の音楽センスの面白さ、独創性である。そして「町おこし」ならぬ「チームおこし」への武器の1つとして、この音楽センスが使えるのではないかという提案である。
「チームおこし? 今季、オリックスとして25年ぶりのリーグ優勝を果たして、実力も人気も上昇中なのに、そんなもの必要なのか?」――という意見も聞こえてきそうだ。それでも私は、音楽やそれ以外のあれやこれやも総動員して、さらに魅力を高める必要があると思っている。
なぜならば、オリックス球団は、そもそも「負の遺産」を抱えてスタートしたからである。
若い方には、このことが分からないかもしれない。「若い方」を言い換えれば、上でさらっと書いた「オリックス、25年ぶりのリーグ優勝」という言い回しにモヤっとしない人。
実は、今季のオリックス球団のリーグ優勝は、「バファローズとしては20年ぶり」でもあったのだ。
だから私は、2004年の球界再編問題を知っている身として、ほとんどのマスコミが「オリックスとして25年ぶり」という言い回しを使ったとき、それを目・耳にした旧・バファローズファン、つまりは近鉄ファンがどう思うのかを推察して、モヤっとしたのである。
2004年、吸収合併の決定後、「大阪近鉄バファローズ」としての最後の試合で、当時監督の梨田昌孝はこう言ったという。
「みんな、胸を張ってプレーしろ。おまえたちがつけている背番号は、すべて近鉄バファローズの永久欠番だ」
また、オリックス(ブレーブス/ブルーウェーブ)の前身である阪急ブレーブスの黄金時代を支えた、あの福本豊は、『日本プロ野球 追憶の「球団史」』(ベースボール・マガジン社)で、こうコメントしている。
「俺はオリックスがバファローズになったときは、ほんとさびしかった。それはもう近鉄やないか」
行き場なく右往左往していた『野球難民』たち
この2つの発言をファン構造の視点に置き換えると、新生「オリックス・バファローズ」球団は、本来、自分たちを支えることが見込まれたはずの、旧・近鉄ファン、旧・阪急ファンを相当数失いながら、スタートしたことを意味する。
私の手元にあるのは、2005年に出版された吉岡悠・著『野球難民』(長崎出版)という本である。「まえがき」には、こう書かれている。