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「最終決戦で和牛ではなく、とろサーモンに投票した理由は…」M-1審査員6回の渡辺正行に聞く“大会史上最高の漫才”
posted2021/12/18 17:00
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph by
Yuki Suenaga
視聴者と審査員の“感覚のズレ”
「審査の基準はやっぱりウケですよね。笑わせるためにやってるわけだから、そこが大前提になってくる。笑いの数や総量だけじゃなく、瞬間的に一番ウケたところの強さも大事にしています。その中で頭一つ抜け出すコンビがいたら全員納得がいくし、こちらとしても差別化しやすい。
僕たち審査員は、『ウケてくれ……!』って願いながらネタを見てるんです。コンテストである以前に、番組ですし、盛り上がってくれるのが一番。それにせっかくの晴れ舞台ですから、ドッカンドッカンやって、すべての出場者にとって今後に繋がる大会になってくれれば最高ですね」
放送後、審査の基準についてネット上で議論が繰り広げられることも珍しくない。2020年大会でマヂカルラブリーが巻き起こした「漫才かどうか論争」は記憶に新しい。またM-1だけではなく、12月13日に行われた『女芸人No.1決定戦 THE W』でもその審査が物議を醸した。
「審査員をやっていない年は当然テレビで観るんですけど、やっぱり感じる熱量が違うんですよね。現場ではどの漫才師も盛り上がっていますが、テレビを通してしまうとイマイチなときがある。ここに差が出ているのかもしれないですね。現場はみんな『漫才見るぞ!』って集中しているから、ものすごい熱気の塊ができている。
でも、テレビの前の視聴者はそうとは限らないですよね。漫才中に審査員の表情を見たりもするし、どうしても客観的になってしまう。人によっては食事をしながら楽しむこともあります。会話をしながら見ている人だっています。漫才に対する集中の仕方、熱量が違えば、見え方は変わってきますよ。そういうところから現場とテレビの感覚にズレが生まれているのかな」