- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
「億を稼げる選手になれ」「ポテンシャルだけでは続かない」栗林良吏に源田壮亮… “トヨタ自動車勢”がプロで活躍できる理由
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2021/12/15 11:03
栗林良吏や源田壮亮を輩出したトヨタ自動車野球部の様子を取材した
そして、3~4カ月に1度、担当コーチと面談。計画通りに進めているのか、目標に向けたアプローチの仕方にどんな修正が必要なのかを話し合う。
例えば、オープン戦でしか登板していない体重100キロの投手がいた場合、体のキレを出すために体重を90キロまで落とす目標を立てる。単に体重を減らすだけではなく体脂肪や筋力の数値なども設定して、トレーナーの助言を受けながらプランを練る。途中経過でペースが思うように上がっていなければ、脂肪を燃焼させるトレーニングを増やすなど、軌道修正して目標達成を目指す。
「ポテンシャルだけでは、長く続きません」
六埜雅司マネージャーはトヨタからプロに進んだ選手が活躍できる理由を「目標設定と自己分析ができているのが大きな要素」と考えている。源田を例に挙げて説明する。
「源田は圧倒的な守備と走塁がありましたが、トヨタ1年目の都市対抗野球本戦はスタメンではありませんでした。打力が足りなかったからです。2年目は打てるようになって、レギュラーとして都市対抗で優勝しています。社会人とプロで違う部分はあると思いますが、試合に出るために目標を立てて、アプローチを考える作業は共通です。ポテンシャルだけでは、長く続きません」
源田はトヨタでプレーした1年目、足を生かすためにセーフティーバントを多用していたという。もちろん、相手の意表をついて出塁する手段としては有効だが、シーズンを通して求められるのは「打力」と気付いた。
源田はレギュラーに必要な打撃を身に付ける計画を立て、得意のセーフティーバントも封印した。逢澤はかつてのチームメートがプロでも結果を残していることについて「技術の向上に加えて、データ分析や自己分析を身に付けていることも要因だと思います。毎日の試合やシーズンを振り返る時に、トヨタの習慣は生きると感じています」と語った。
そして、トヨタからプロへ進んだ選手が活躍できる、もう1つの理由は「覚悟」にある。終身雇用制が崩れてきているとはいえ、国内有数の企業・トヨタ自動車の社員は将来安泰に見える。プロ野球選手としてトヨタでの生涯賃金に並ぶには、10年ほど一軍に定着しなければならない。厳しい競争に加えて、けがのリスクもある。安定を捨てて、「夢を追う」と決断するのは簡単ではないはずだ。
ドラフトにかかる力があってもトヨタに残る選手も
また、会社の強化指定部となっている野球部はめぐまれた環境にある。
バットや手袋、シューズなど、選手が野球用品を負担することはない。支給されるスパッツも、可動域が上がってパフォーマンスが向上する効果があるとチームが判断すれば、より機能性の高いものに替える。
他の社会人チームがうらやむ環境だ。実際、ドラフトにかかる力があってもトヨタに残る選手もいる。プロに行くのか、チームに残るのか。その選択に善し悪しはない。それだけ、トヨタ野球部は魅力的だということだ。
「プロを目指すなら億を稼げる選手になれ」
目標とそこへたどり着くまでの道筋をはっきりと描いてプロ入りしたからこそ、トヨタ出身の選手たちの今がある。<栗林編に続く>