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プロ野球PRESSBACK NUMBER
カープ栗林良吏は「あの時から雰囲気が…」 社会人での転機と元DeNA細山田武史の指摘《大学でドラフト指名漏れ》
posted2021/12/15 11:02
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Steph Chambers/Getty Images
プロ1年目の開幕から守護神を任され、スコアボードに「ゼロ」を刻み続けた。広島・栗林良吏がプロ初失点を喫したのは6月13日。シーズンが始まって2カ月半以上が経っていた。開幕から22試合連続で無失点。新人選手の記録を更新し、球団記録も塗り替えた。
東京五輪では、日本代表の守護神に抜擢された。地元開催、野球大国の威信。金メダルが至上命令とされる中、胴上げ投手となった。抜群の安定感はシーズンの最後まで衰えなかった。53試合に登板して0勝1敗37セーブ。防御率0.86と驚異的な数字を残して、プロ1年目を終えた。
人生に「たられば」はない。だが、わずかなすれ違いがあったら、現在の栗林の姿を見られなかったかもしれない。栗林はトヨタ自動車から昨秋のドラフト会議で1位指名を受けた広島に入団した。ドラフト上位候補と言われていた名城大4年の秋は、まさかの指名漏れ。プロの道をあきらめた。
トヨタの同期、逢澤崚介外野手は入部当時を振り返る。
「栗林はトヨタに入れたので十分、トヨタに拾ってもらった恩返しをしようと考えていました」
再びプロを目指す2つのターニングポイント
トヨタの仲間たちは、栗林が再びプロを目指すターニングポイントが2つあったと回想する。
逢澤が指摘するのは、トヨタ1年目に社会人選抜で出場した「アジア・ウインターリーグ」である。
日本プロ野球の若手有望選手や、台湾や韓国のプロ野球選抜チームも参加する大会で社会人選抜を優勝に導く胴上げ投手となった。ウインターリーグでもチームメートだった逢澤が振り返る。
「プロ入りした同世代の選手とウインターリーグで対戦して、自分もプロでやりたい気持ちが出てきたと話していました。トヨタでは先発の柱でしたが、個人的には抑えに向いていると思っていました。ウインターリーグでプロの打者にも全く打たれなくて、短いイニングは別格と感じました」
逢澤は栗林に守護神の適性を感じていた。「打席で待っているのに、気付いたら手元まできていて前に飛ばせない」という伸びのある直球。ピンチでも自分を見失わない冷静さと強さを持っていた。ウインターリーグ後から、逢澤は栗林に生まれた変化を感じる。