濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“新マスク”の下から苦悶の表情が…タイガー・クイーン大苦戦の真相とは? 勝負の来年は“女ダイナマイト・キッド”が登場か
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/12/14 17:05
12月9日の年内最終戦、ライディーン鋼に勝利を収めたタイガー・クイーンだが大苦戦となった
つまり“謎”が魅力でありつつ、同時に分かりにくくもある。新しいマスクは後者の面での“前進”だった。ただ、そこでまず見えたのが“苦しさ”になった。なってしまった、と言ったほうがいいかもしれない。リングサイドで撮影していると、クイーンの呼吸が荒くなっているのも分かった。時折、呻き声のようなものも聞こえる。
10月に対戦した彩羽は、相手として見たクイーンについて感情が分からないから不気味だったと語っている。その不気味さが、新しいマスクでは(観客に向けた若干の分かりやすさと引き換えに)薄れることになった。
ファイターは自分がキツい場面でも、相手が苦しそうにしていると気持ちが楽になり、勢いを取り戻すという。この試合で言えば、もともと鋼が主導権を握っていた上にクイーンの“苦しさ”が伝わってきた。鋼は余計に勢いづくわけだ。彩羽戦もここまでではなかったというほどの苦闘だった。それもまた新鮮ではあったのだが。
「初代タイガーにはない技」がとっさに出た試合
そういう試合でも最終的に勝利したのはクイーンだった。DDTに続いての飛び技はかわされて得意技をたたみかけるところまではいかなかったが、それでも投げっぱなしジャーマンからタイガースープレックス。強引にねじ伏せるようなフィニッシュだ。それができたのは「1つの技を2時間くらいかけて練習する」努力の成果か。ともあれギリギリのところで、クイーンは無敗のまま2021年を終えた。
苦しい中で収穫もあった。619や前方宙返りしながらのキックなど、この日のクイーンは初代にはない技を多く出している。逆に鋼の奇襲によって、試合序盤の“タイガーステップ”は見られなかった。サマーソルトキックもなし。苦しい展開の中でとっさに出した技だからこそ、個性が出たということではないか。
デビュー時にはジャガーに「初代タイガーのクローン」と絶賛されたクイーン。しかしキャリアを重ねる中で、オリジナリティを発揮していくことも重要だ。それは佐山、ジャガーともに指摘している。
彩羽戦ではオリジナル必殺技であるタイガースープレックス2021で勝利。そして今回も、クイーンは自分らしい闘いを見せたことになる。