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<労使交渉決裂>ロックアウト突入とFA市場の行方。駆け込み大型契約が済んだ今、鈴木誠也を獲得するMLB球団はどこ?
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byKYODO
posted2021/12/02 17:00
東京五輪のアメリカ戦で特大のホームランを放った鈴木誠也。米球界へのアピールは十分だ
こうなると気になるのが、「投手陣を補強」するはずだったエンジェルスの動向だ。以前にも触れたが、エンジェルスは手術明けのノア・シンダーガードと年俸2100万ドルの1年契約を結んだ。ギャンブル性の強い投資だが、彼以外には二刀流マイケル・ロレンゼンの獲得が決まったぐらいで、狙っていたジョン・グレイは同地区のレンジャーズへ、ロビー・レイも(先ほど述べたとおり)やはり同地区のマリナーズにさらわれてしまった。
さらには、残る最大の目玉と見られていたマーカス・ストローマンも、ロックアウト突入直前にカブスと契約を結んだ(4年総額7100万ドル)。
エンジェルス有力の声が高かっただけに、GMのペリー・ミナシアンは切歯扼腕の思いだろう。ここは無理筋を承知で、最後の大物クレイトン・カーショーとの短期契約に狙いを変えるほかないのではないか。あるいは、トレードに活路を見いだすか。去就がはっきりしなかった抑えの切り札ライセル・イグレシアス(FA)とはなんとか再契約に漕ぎ着けたものの(4年総額5800万ドル)、ミナシアンはまだ当分、頭の痛い日々を送ることになるだろう。
鈴木誠也の評価はいかに?
気になるといえば、NPBからポスティングでMLBをめざす鈴木誠也の行く先もまだ決まっていない。1998年に日米の球界でポスティング制度が誕生して以来、NPBからリストに載った選手は34人で、そのうち21人がMLBと契約を交わしている。
鈴木の場合、2016年から6年連続で打率3割をキープし、902試合で182本塁打、ゴールデングラヴを4回獲得している総合力が評価されるはずだ。つまり、パワーヒッターというよりは、スピードのある中距離打者。MLBのスカウトのなかには、ロナルド・アクーニャJr.と比較する声もあるが、そのレベルに進むにはもう少し破壊力が欲しい。
興味を示しているのは、8球団から15球団といわれる。ロックアウトで交渉が中断されたため(ポスティングが開始されたのは11月22日)、交渉再開がいつになるかはわからないが、新協定が発効してから20日間以内で結論を出す必要がある。
今季のFA市場に残っている有力な外野手はニック・カステヤノス、カイル・シュワーバーぐらいなので(クリス・テイラーはドジャースと再契約した)、鈴木を求める球団は多いと思われる。当初はレンジャーズが有力候補とささやかれていたが、マリナーズ、ジャイアンツ、フィリーズ、レッドソックス、パドレスあたりが触手を伸ばしてくる可能性も十分にある。高い評価の契約条件が提示されるのを待とうではないか。