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藤井聡太“竜王”の優勝賞金4400万円、羽生善治“七冠”時は総額1億6500万円、無冠の今は?〈意外と知らない棋士の収入事情〉
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2021/12/01 11:05
藤井聡太四冠が栄光を掴んだ竜王戦は優勝賞金が4400万円だ
藤井四冠が14歳・四段としてプロ公式戦で初対局したのは2016年12月。その後、デビューから負けなしで29連勝の新記録を達成し、8割台の勝率を挙げて勝ちまくった。しかし、四段の対局料は高くないので、2017年に得た賞金・対局料は総額で約700万円と推定される。
藤井は2018年の賞金・対局料ランキングで、朝日杯将棋オープン戦の優勝などで2030万円(12位)を得た。2019年の同ランキングは、前年と同じ実績で2100万円(9位)。そして2020年には棋聖と王位のタイトル二冠を初めて獲得。合わせて約2000万円の賞金が加算され、同年ランキングは4550万円(4位)と倍増した。
2021年の藤井四冠も“大台到達”か?
藤井は2021年に「四冠」を取得し、竜王戦優勝賞金の4400万円を得ることになった。11月に4連勝で早く終ったので、今年中に支給されば、2021年に獲得する賞金・対局料の総額は、1億円の大台に達するかもしれない(編集註:支給時期などの文意を修正しました)。
19歳でこれほどの高額の収入を得るというのは、ほかの世界でもあまりないと思う。
藤井の師匠である杉本昌隆八段は「収入は倍増したけど、税金も倍増するので、しっかり貯金してほしい」と、弟子にアドバイスしたという。
ただ藤井は賞金に関心がなく、使う当てもないようだ。以前から質素に暮らしていて、中学時代は兄のお古の服をよく着ていた。藤井が仕事で使う必要経費は、研究で用いる高性能のパソコンと将棋ソフト、タイトル戦で着用する和服ぐらいだ。師匠が心配するまでもなく、賞金は貯蓄されることだろう。
将棋連盟の財源ってどうなっている?
将棋連盟の主な財源について説明すると――棋士の棋譜を提供する対価として得る、新聞社・テレビ局・企業・自治体などとの棋戦契約金である。
1960年代の頃は、現代と比べて棋戦契約金が全体に低かった。連盟の運営は厳しく、棋士はあまり豊かではなかった。そんな状況で当時の理事会は、タイトルを独占していた大山康晴名人の理解を得て賞金を減額し、棋士全体にお金が行き渡る方式にした。それが後述する「基本手当」である。
棋士の集団である連盟は勝負の世界だが、棋士の生活を保障する「大家族」のような一面もあった。棋士の中から会長や理事が選ばれて運営しているからだ。企業の経営陣と会社員の関係とは異なる。