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少年野球、母親たちを悩ます「お茶当番」問題…アメリカで同様の問題はないのか?「日本のお茶当番に似ていますが、当番制ではありません」 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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photograph byGetty Images

posted2021/11/27 11:03

少年野球、母親たちを悩ます「お茶当番」問題…アメリカで同様の問題はないのか?「日本のお茶当番に似ていますが、当番制ではありません」<Number Web> photograph by Getty Images

少年野球チーム内の「お茶当番」、アメリカでの実情は?

「子どもが小さいうちは、試合の点数付けや、試合後のおやつや飲み物の用意などです。日本のお茶当番に似ているかもしれませんが、それ以前に、送迎で現場には行くわけです。その負担がそもそも圧倒的に大きいので、そこで何かをすることをとくに負担には感じませんね。保護者でコーチをする人たちも、送迎に行くから、ついでに指導をやってもいいという感覚。子どもが成長して学校の運動部に入っても、場内アナウンス、スコア表示、試合の観客に飲食物を売る売店(この売り上げをチームの活動費に充てる)など親の負担は続きます。私の経験している範囲では、これらは当番制ではありません。コーチ以外の保護者がマネジメント役になり、役割のタスク一覧をメールでみんなに送るというやり方です。保護者それぞれが自分が対応できるタスクを選んで引き受けて、共有カレンダーに入力していきます」

 そのタスクとは、例えば「売店で売り子」「スコア表示」「パーティーの準備」といった具合に、チーム運営に必要な作業を細かく切り出したもの。これらの一覧を眺めて、自分ができるタスクを、自分が動ける日にやればいい。空白のままのタスクが発生することもあるが、最終的には「誰もいないなら」と誰かしらが手を挙げるという。

コーチの子どもは「優先的に合格させられる」

「こうしたやり方は、子どものスポーツチームに限りません。アメリカでは、学校でパーティーをするときですら、誰かがマネジメント担当になって、タスクを参加者に送ります。全般的に、日本の組織運営には、マネジメントという概念がないように思いますね。それに、当番制であることで、仕事をやらされるとか、押し付けられたといった負担を感じさせてしまうのではないでしょうか」

 それに加えて、アメリカではチーム運営に積極的に参加することで、実利もある。

「アメリカでも、年齢の低い子どものチームの指導者は、親がボランティアで行っているケースが多いです。競技チームにはトライアウトがありますが、その際にコーチをしている保護者は、自分の子どもを優先的に合格させたり、試合でも優先的に起用したりできます。日本だと特別扱いはダメだとされますけど、アメリカでは、『コーチしてくれているから仕方ない。あのコーチがいなければチームが維持できない』と保護者も容認している面があります。コーチだけではなく、マネジメントやチームに協力的な保護者の子どもが当落線上のときは、合格させるケースもあります。協力的な親が多いのはこういった背景も関係していると思います。アメリカは『やったら得をする』加点方式、日本は『やらないと損をする』という減点方式の違いかもしれません」

「小学生のうちに子どもとたくさん関わってほしい」

 このように、アメリカでは子どもをスポーツチームに入れて、送迎や役割をこなすのも重要な子育ての一環であり、我が子の将来を思えば「チーム運営への参加が負担だからスポーツなんかさせたくない」と文句は言っていられないようだ。

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#筒香嘉智

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