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筒香が2年前に問いかけた…少年野球、母親たちの「お茶当番」問題は改善されたのか? ある監督のため息「チームが託児所代わりになった」

posted2021/11/27 11:02

 
筒香が2年前に問いかけた…少年野球、母親たちの「お茶当番」問題は改善されたのか? ある監督のため息「チームが託児所代わりになった」<Number Web> photograph by Getty Images

小学生の軟式野球プレイヤーは減少の一途だという。その一因として注目されているのが、少年野球チーム内の「お茶当番」だ

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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2019年1月、外国人特派員協会での会見で筒香嘉智選手(現パイレーツ)が訴えた少年野球の「お茶当番」問題。あれから2年半が経ち、現場は変わったのだろうか。(全2回の1回目/後編へ続く)。

 エンゼルス大谷翔平のMVP獲得や、新庄剛志の北海道日本ハムファイターズ監督就任など、球界にはここ最近、明るい話題があふれ、メディアやネットをにぎわせている。

 しかし、メジャーリーグやプロ野球の盛り上がりとは対照的に、日本の野球競技人口は減少の一途だ。特に、その下支えを担う小学生の問題は深刻で、全日本軟式野球連盟によると小学生の軟式プレイヤーは2010年には29.6万人いたが(※注)、10年後の2020年には18.7万人と約11万人も減少。この期間の日本の小学生人口の減少率は10%程度だが、その3~4倍の速さで球児が消滅していることになる。
(※注.2010年のチーム数の調査結果はあるが、登録児童数そのものの調査は存在しないため、1チームあたり20人として概算した)

 その一因として注目されているのが、少年野球チーム内の「お茶当番」だ。2019年1月に、筒香嘉智選手(当時横浜DeNAベイスターズ)が、日本外国特派員協会で開いた記者会見で言及して大きな話題となった。

 筒香選手は、会見で日本の少年野球が抱える問題点の数々を語ったが、質疑応答の中で以下のやりとりがあった。

外国メディア記者「少年野球の試合を観戦した際に母親から聞いたところでは、夏休みの間、母親がずっと練習を観に行かなければならず、子どもたちと指導者のために100人分のお昼ご飯を作らなければならない。筒香さんは、そういう現状をご存知ですか」

筒香選手「(自分の出身チームである堺ビッグボーイズの)保護者から聞いたところによると、お茶当番があるので子どもたちと出かけたり、お母さんたちがしたいことが何もできないチームは存在する」

43.1%の親が「お茶当番に負担を感じる」

 お茶当番とは、監督やコーチに食事やお茶を用意したり、体が小さいぶん脱水症になりやすい子どもたちに給水する係で、保護者が持ち回りで担当する。これに駆り出されることが、保護者の大きな負担になっているというのだ。

 実際、笹川スポーツ財団の「4~11歳を対象としたスポーツライフに関する調査」(2019年)でも、4~11歳の子どもを持つ親の43.1%が「お茶当番などの運営の手伝い」に負担を感じており、ダントツの数字である。ちなみに2位以下は、「練習場所までの送迎」(25.2%)、「指導や審判員の補助」(24.1%)、「練習や試合の付き添い、見学」(20.5%)、「お弁当や飲み物の準備」(16.7%)、「ユニフォームや練習着の洗濯」(9.5%)となっている。

 こうしたお茶当番の負担を嫌って「子どもに野球をやらせたくない」と考える保護者がいるのならば、チーム運営者たちも応えざるを得ない。かくして筒香発言以降、ネット上では、多くのチームが「当チームは、お茶当番を廃止しました!」と盛んに発信し、子どもの入団をためらう保護者の背中を押そうとアピール中だ。

【次ページ】 “お茶当番”を作らざるを得ない現実

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